“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20W杯を確定させ次はACL決勝へ。
平常心で勝利を呼び込む安部裕葵。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2018/10/31 17:30
影山雅永代表監督も納得のチーム離脱となった安部裕葵。次はクラブでアジアNo.1を目指す。
「悪い雰囲気に引きずり込まれ」
実際に、その研ぎ澄まされた思考は、途中出場を果たした初戦の北朝鮮戦からすぐに発揮された。
「僕が入った時はリード(3-2)していたので、もちろんゴールを狙うチャンスがあれば狙いますが、僕の中では……長い時間出ている選手にプラスになるような、彼らの為になるようなプレーを心がけました」
攻め急がず、かつ慎重にもなり過ぎず……バランスを取ったプレーをしつつ、後半アディショナルタイムには敵にとどめを刺す5点目を自ら決めてみせてもいる。
そしてこの大会で最初のスタメン出場となったグループリーグ第2戦のタイ戦。この時は、前半だけで3点リードして迎えた後半の頭に、異変を察知した。
「後半1失点(54分)する前後ですね。3点リードしているのだから、もっと落ち着けばいいのにそうでは無い雰囲気になっていました。
チーム全体として良くない雰囲気を感じていて、周りの選手の声の掛け方、表情を見て……自分もちょっと悪い雰囲気に引きずり込まれそうになったので、まずいなと思ったんです。なので、そこから切り替えて、平常心に戻しました。
他の選手が気づく前に自分自身で気づけたことはポジティブな要素だけど、現にそこで失点をしてしまっているので……ちょっと(切り替えが)遅かったのかもしれません」
「僕らはプロ選手なので」
自分ならもっと早くチーム全体を平常心に戻して、プレーを落ち着かせることができたはず……少し後悔の念が湧き起こったが、この反省を彼は準々決勝のインドネシア戦ですぐに活かしたようだった。
「インドネシアとは一度やっていて、相手の情報もありますし、僕もスタッフも含めて全員が勝つ自信を持っている。試合というのは慢心とかそういうのが一番怖いので、そういう部分を出さないこと、に集中しました。
観客が多いことに関しては、多いことが分かった上でやるので、逆にそういうのをエネルギーに変えないと……僕らはプロ選手なので。そこは関係ない。J1でやっている選手も多いですから」
その言葉通り実際に360度、6万人の大観衆に包まれても、安部を始めとした選手達は全く動揺していないようだった。安部も自分が「ゾーン」に入っていけていることが分かったという。
「みんな集中して戦えていた。(自分がいる)右サイドがうまくいっていたので、右サイドからセンタリングなどを狙っていました。僕に結構プレスに来ていたのが分かっていたので、それを上手く利用できました。
大観衆はAFCのアウェイはこんな感じなんで、僕自身は慣れていますけど。それに飲み込まれないようにみんなで声を掛けあうことは意識していました」