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U-20W杯を確定させ次はACL決勝へ。
平常心で勝利を呼び込む安部裕葵。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byAFLO

posted2018/10/31 17:30

U-20W杯を確定させ次はACL決勝へ。平常心で勝利を呼び込む安部裕葵。<Number Web> photograph by AFLO

影山雅永代表監督も納得のチーム離脱となった安部裕葵。次はクラブでアジアNo.1を目指す。

「凄く淡々としているけど……」

 試合後のミックスゾーンで、彼はいつも通りクールな表情で受け答えをしていた。

 報道陣から「凄く淡々としているけど、嬉しいですか?」という質問が飛んできた。すると少し微笑んで、「嬉しいですよ。嬉しいです。これからホテルに戻って騒ぎます」と笑顔で答えてくれた。そんな風景も、彼らしい対応だと思った。

 実はインドネシア戦の前日の取材で筆者は、彼と1対1でこういう会話をしていた。

「平常心でいるって、言葉では簡単だけど難しいよね」と質問すると、「難しいですよね……。乱れてしまうことはもちろんありますが、その『波』が少しできた瞬間に、自分で気づくことができるようになったので。

 選手の中にはその乱れを逆にうまく利用する人も居ますし、怒ったり、相手と言い合うことで戦う選手も居る。でも僕はそうじゃないですから」

 さらに「次の試合は、負ければ終わりという一発勝負です。なので、本当に些細なことが命取りとなります。そこはどう気をつけていきたいと思っているんですか?」と問うと、引き締まった表情でこう答えてきた。

「やっぱり自分が本当に力のある選手であれば、ワンプレーだったり、1つの声でチームを救えることもあるはずで。

 でも、そこは普段の練習の態度だったり、日常的なホテルでの過ごし方だったり……そういう時に出てくる人間性も、周りの選手はしっかりと見ていると思うので。そういうところから僕がいい存在であれば、試合でもいい影響力を与えられると思っています」

 この言葉通り、今大会の安部は、その姿勢を貫き通した。

 そして、その決戦ともいえるインドネシア戦に勝利した翌々日、彼がU-19日本代表チームを離脱し、鹿島に戻ることが発表された。

「周りにいい影響を与える選手になりたい」

 グループリーグ第3戦のイラク戦翌日の練習で、彼は報道陣から「準々決勝を突破したら帰国して(ACLを戦う鹿島の)チームに合流したいか」というストレートな問いに対し、「難しいところはありますが……たとえそれがあったとしても表には出さないですし、言わないですし。常に、与えられた環境でベストを尽くすことが素晴らしいサッカー選手だと思っていますので」

 与えられた環境でベストを尽くす。

 このときはAFC U-19選手権というステージで輝くことのみを考え、いざこうして鹿島への合流が決まった瞬間に、彼はACL決勝というステージで輝くことに思考を切り替えたはずだ。

「サッカーには年齢は関係ない。11人の1人ひとりが、とにかく自分以外の10人にいい影響を与えることが凄く重要なスポーツなんです。だから、その1人として僕は何度もメディアに対して『周りにいい影響を与える選手になりたい』と口にしています。それが、僕が常に思っていることです」

 次はその想いを鹿島で発揮する番だ。

 日本代表としてインドネシアの地で「平常心」という武器に更なる磨きをかけた安部裕葵は、次はJリーグ代表としてACL決勝の舞台に立つ――。

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