“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20W杯を狙う守護神の厳しい競争。
第3GKの若原智哉は涙を堪えて……。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/10/26 17:30
左から、谷晃生、大迫敬介、若原智哉。五輪世代の若き守護神たちの切磋琢磨は、まだ始まったばかりである。
同世代GKより成長していたはず……。
若原は、そのGKとしての持ち味である反応の速さと、判断の良さを活かしたセービング、そして裏のスペースのカバーリングの技術を磨き上げていった。そして、今年5月には同年代のGKたちの中でもひと足早いトップチームデビューを飾っている。そこから立て続けにリーグ12試合に出場し、8月には早くもプロA契約を締結するなど、この世代のGKにおいて抜け出た存在にまでなっていた。
9月に入ると、29歳のベテランGK清水圭介の奮起でベンチに回ることが増えたが、それでも依然としてベテランと第1GKの座を巡ってしのぎを削りあっていたのである。
若原は所属クラブでGKとして自信を重ねることができた。そして、今回の代表選手23人の中で唯一2大会連続でAFC U-19選手権メンバーに選ばれ、背番号も1番を与えられていたのである。
「やっぱりサコの存在は凄く大きいですし、一緒に代表合宿をしていろいろ得られるものがあった。さらにガンバの谷なども入ってきているので、その中でも1番手をとることは非常に難しくなっていると感じます。でも、自分ならできると思っているので、1日1日をしっかりと吸収して、時にはリーダーシップをとってU-19でも存在感を出したいと思います」
以前はそんな風に抱負を語っていた若原。当然厳しい競争になる覚悟はしていたわけだが、いざインドネシアに入ると、それが想像を超えるものだったと感じることとなった。
初戦・北朝鮮戦のピッチに立っていたのは、1学年下、2000年生まれの谷だったのだ。
年下で海外経験も豊富なライバル。
谷は2000年生まれ以降で構成されたU-16、U-17日本代表において不動の守護神である。
一昨年のAFC U-16選手権(インド)では、厳しい戦いが続いたアジア最終予選を経験し、U-17W杯でも正GKとして活躍している。W杯の決勝トーナメント初戦のイングランド戦では、相手の分厚い攻撃に対し、最後まで集中力を切らすこと無くクリーンシートで終わっている(PK戦の末に敗退)。谷とても、当然ながらハイレベルな技術を持ち合わせていることは間違いない。
「直前キャンプまでは3人ともバチバチのライバル関係でやっていました。僕自身もレギュラーを取るために、自分の持ち味を直前キャンプまでずっと出し続けてアピールしてきた。でも初戦に晃生が出るということ(第1GKは谷ということ)が決まってからは、僕とサコの役割がはっきりした。
それ(第1GKのサポート)をしっかりとやり通すというか、晃生をいかにいい状態で試合に送り出すかが自分達の役割だと思っているので、そこはすぐに切り替えました」