“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20W杯を狙う守護神の厳しい競争。
第3GKの若原智哉は涙を堪えて……。
posted2018/10/26 17:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
非常に気丈だった。取材している筆者ですら心を揺さぶられるほどに――。
AFC U-19選手権グループリーグ第3戦・イラク戦後のミックスゾーンでのこと。GKの若原智哉(京都サンガ)は、取材をしていた筆者の呼びかけに足を止め、真摯な態度で質問に答え続けてくれた。
この試合、日本はその前の2戦で連勝し、すでに決勝トーナメント進出を決めていた。初戦の北朝鮮戦、第2戦のタイ戦は、GKとして谷晃生(ガンバ大阪)がスタメンフル出場を果たし、いわゆる「第1GK」の座を確定させていた。つまり、この3戦目のイラク戦に出場する選手が“現時点での”第2GKとなるわけだ。谷以外の2人、若原と大迫敬介(サンフレッチェ広島)にとってイラク戦は、大きく明暗が分かれる重要な一戦だったのである。
そして……結局、イラク戦のピッチに立ったのは大迫だった。
同い年のライバルの存在。
若原と大迫の2人は1999年生まれで、この年代では常に正GK争いを演じるライバルだった。2人とも同世代で名前が知れ渡っており、この2人の正GK争いは過去のチームと比較してもかなりハイレベルな争いになっていた。
今から2年前のAFC U-19選手権(バーレーン)でのこと。この時参加した代表では、若原が中村駿太(現・モンテディオ山形)とともに、最年少世代として選ばれた(試合出場なし)。だが、その若原もU-20W杯メンバーから落選。メンバー入りを目指していた大迫とともに悔しさを味わうこととなった。
そして昨年のAFC U-19選手権予選(アジア1次予選、モンゴル)では2人揃ってメンバー入りし、初戦は背番号1を背負った大迫が出場。第2戦は若原が出たが、第3戦は再び大迫となっていた。
「もっとGKとして成長してサコ(大迫)に負けないようにしたい。サコとはいいライバル関係だし、凄く刺激を与えてくれる存在なので、2人で成長していきたい」
大迫とは「バチバチのライバル」(若原)であるが、共に切磋琢磨をする心通った仲間でもあったのだ。