“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-20W杯を狙う守護神の厳しい競争。
第3GKの若原智哉は涙を堪えて……。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/10/26 17:30
左から、谷晃生、大迫敬介、若原智哉。五輪世代の若き守護神たちの切磋琢磨は、まだ始まったばかりである。
「全員まとまったから優勝できた」
複雑な思いはあったはずだ。だが、この大会はチームとして一丸となって戦わないと絶対に勝てないということも、良く分かっていた。
「前回大会も全員がまとまったからこそ優勝できたんです。だからこそ、僕はチームとしてやるべきことをやるだけ。まずはU-20W杯出場を決めてからです。
その後、『次は俺が出る!』という気持ちで1年間準備したいので、今はチームのためにやるべきことを全力でやりたい」
北朝鮮戦、タイ戦の2戦は、精一杯、谷をサポートした。
だからこそ、イラクとの第3戦は「この試合こそ俺が!」という思いがなおさら強かったはずだ。
「今日の試合(イラク戦)は自分にとってチャンスだと思っていたので、サコがスタメンと言われた瞬間は……悔しいと言うか、ちょっと……難しい気持ちになったのは事実です。
とにかく試合に出たかったので、僕は今日という日を『特別な日』にしていたので……。監督にスタメンのことを言われた瞬間は頭の中が真っ白になったけど、すぐに『これはもうサコのサポートで頑張るしかない』という気持ちになったんで」
「俺は何のためにやってきたんやろ?」
時に声を詰まらせながらもしっかりした口調で取材に対応し続けてくれた若原。
取材者側も、もちろんこういう状況の選手(特にその人柄を良く知っている選手ならなおさら)に話を聞くことは本当に辛いのだが、こういう状況だからこそ、逆に聞かなければならない、と考えてもいた。
「もちろん、ホテルの部屋などで1人になると、いろいろ考えてしまう時もありますよ。前回大会は第3GKで、今回も2年前とまた同じような状況になってしまったわけですから。
J2で試合に出て、自分では大きく成長したなと思うこともあったのですが、これが現状なんですよね……。もしかすると、この2年間で自分は全然成長できていないんじゃないかと思ってしまったりもします。『俺は何のためにやってきたんやろ?』とかずっと考えてしまうこともありました」
素直に辛い思いを伝えながらも、自分自身の評価に対する冷静さは失わない。そして、チームとして戦うことを決して忘れないようにしつつ、自らへの奮起のメッセージもはっきりと口にしていた若原。
「ここで僕が腐ったら終わりやと思ってるんで。ここで一緒に戦うメンバーにそういった暗い顔を見せてしまうと、チームの雰囲気も悪くなってしまう。だから、そこは絶対に前向きにいきたい。
今はチームのために、そして、晃生とサコの3人でチームをガンガン盛り立てていきたいんです。
GKというポジションは1つしかないですし、他のポジションと比べるとどうしても(選手交代などで)難しい部分はあります。でも今こういうことを味わっておけば、いつかは自分の成長にも繋がっていくと思っているので」