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大谷翔平を預かる新監督の履歴書。
失敗からの再起はフロント主導か。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2018/10/29 07:00
2019年のエンゼルスを率いるオースマス監督。チーム事情は複雑だが、どれだけ総合力を高められるか。
アストロズ監督も不遇の時が。
昨季のワールドシリーズ王者ヒューストン・アストロズのA.J.ヒンチ監督も、Second Chanceをモノにした1人だ。彼は現役引退後、アリゾナ・ダイヤモンドバックスの編成部門入りし、当時の監督ボブ・メルビン(現アスレチックス監督)が失脚したシーズン中に突如、監督に抜擢された。34歳の時である。
「リーダーになるにはいろんな道があると思うけど、私の場合は結構、弾丸を打たれながらそこに辿り着いたようなものかも知れない(笑)。マイナーでも監督経験がなかった私には、クラブハウスの文化をいかに築くのかっていうのは未知の世界でね。現役時代は自然にあったものが、実は監督やコーチ、選手の質によって大きく違うものなんだと思い知ったよ」
ヒンチは当時、選手たちから「俺たちは前の監督が好きだったのに、なんでお前が?」という扱いを受けたらしく、それはチーム成績に露骨に表れた。翌夏に解雇されるまでのチーム成績は通算89勝123敗(勝率.420)と不本意な成績に終わっている。
頭脳を生かすための分析を。
彼が再起のチャンスを掴んだのは3年前のことだった。
2013年に3年連続シーズン100敗以上を記録した弱小球団は2014年も70勝92敗(勝率.432)で地区4位に沈んでいたが、ヒンチ監督が指揮を執り出した2015年に地区2位でワイルドカードでプレーオフに進出した。
2017年には球団史上初のワールドシリーズ制覇を果たした。アストロズでの4年間の通算では374勝274敗(勝率.577)と、こちらも汚名を返上した。
ヒンチは西海岸の名門スタンフォード大学の出身で、現役引退前からその明晰な頭脳を生かす道を探っていたという。
そしてオースマスもまた、タイガース監督の任を解かれた直後、「(数字の)分析についての知識を広げたい」という野心を持って、分析部門の拡充を図ってきたエンゼルスのビリー・エプラーGMの誘いに乗ってフロント入りしている。
オースマス新監督は10月22日の就任会見で、こう言っている。
「現役時代も相手チームのスカウティング・リポートをうまく活用していたつもりだが、今は見たことがないぐらい豊富な情報が存在し、分析とは何なのかを自分に浸透させるいい機会だった。私は学び取るのが早いと思っているし、自分に合っていると思う」