プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人が原新体制に託す巨大な宿題。
指導者も、育てる必要があるのだ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/10/20 12:00
2018年の巨人は、負けるべくして負けたのだろう。勝つべくして勝つ球団に生まれ変わるための戦いが始まる。
ヤクルト戦でも危険なミスは出ていた。
実はヤクルトとのファーストステージの裏側でも、こんな場面があったという。
第1戦、1点を先制したあとの2回2死二塁という守備の場面。打席は8番の中村悠平捕手。次打者は小川泰弘投手である。
確実を期したい場面でカウントが2ボールとなった時点で、「歩かせて塁を埋める」という案が出た。ところがそこですぐに動けずベンチが固まっていたら、3球目を中越えに痛恨の同点打を浴びたのである。
幸いにも直後の3回に坂本勇人内野手の勝ち越しソロが飛び出して試合の主導権を再び取り返せたが、致命傷になりかねないベンチのミスだった。
監督の経験不足と、それを支えるスタッフの力量不足と指摘されても仕方ない場面である。
ファイナルステージ初戦のエンドラン失敗で勢いを失った途端に打開策を見出せくなりズルズルと3連敗した背景には、根本的なチーム力の差と同時に、こうしたベンチワークの差があったことも認めざるを得ないだろう。
コーチ経験者が少ない異例の新布陣。
3年前に高橋監督は、兼任コーチという肩書きはあったが指導者としてはほとんど準備もないままに監督に就任した。そしてついに、1度も勝てないまま辞任に追い込まれた。
もちろん球団の責任は重い。この高橋監督の3年間で巨人が得た大きな教訓は、選手だけでなく指導者もまた育てなければ、チームは育っていかないということだ。
週明けには高橋監督の退任と原辰徳新監督の復帰会見が行われる予定だという。
CSの熱戦の裏側で原新体制の組閣作業も着々と進んでいたが、そこで見えてきたテーマはまさに指導者の育成である。
一軍の投手コーチには宮本和知氏と水野雄仁氏、打撃コーチには元木大介氏といずれも生え抜きのOBを招聘。バッテリーコーチには2015年にヤクルトから巨人に移籍してきた相川亮二氏の入閣も内定している。
水野氏以外はいずれもコーチ経験がないが、それでも評論家としてネット裏から巨人の野球をつぶさに見てきた実績を買ってのものだった。
また今季限りで現役を引退した杉内俊哉氏と昨年まで巨人に在籍して今季は独立リーグBC栃木でプレーしていた現役を終えた村田修一氏もそれぞれ二軍の投手コーチと打撃コーチとして指導者生活をスタートさせる。
今回の組閣で一軍には20年ぶりにヘッドコーチを置かないことも決まっている。その上で監督の周りをコーチ経験のないスタッフで固めることは、まさに異例の決断といえるだろう。