“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-16アジア制覇を支えたBチーム。
紅白戦から本気で戦う集団だった。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/10/10 17:30
アジア制覇を達成したU-16日本代表。森山監督(前列中央)のもとでサッカー選手としての原点を磨き上げる大会となった。
決勝翌日に選手が語った決意。
森山監督のもとで作り上げた競争の中で、序列もすぐに入れ替わる戦いの世界。それと同時に、1つの目標に向かって前進していける組織。キャプテンを務め、全試合フル出場を果たしたCB半田陸(モンテディオ山形ユース)はこう語った。
「練習の紅白戦でもサブ組が勝ったりしていたので、そういうところでスタメン組も“このままじゃダメだ”という意識で練習できていた。紅白戦をこなすごとに、どっちも“負けられないぞ”という雰囲気で戦えていた」
“戦う集団”が手にしたU-17W杯出場権とアジアチャンピオン。決勝翌日のホテルで選手1人1人が全員の前で一言ずつ語ったが、彼らの言葉もまた熱く、そして闘志に満ちていた。
半田のように「まず自分はこの中で誰よりも早くJリーグに出場して、来年のW杯で余裕を持ってたくましく、みんなを引っ張って行ける存在になりたい」と目標を公言する者もいれば、思うように試合に出場できず、涙を流しながら悔しさをにじませたり、反省点や改善点を口にする選手もいるなど、それぞれが自分の思いを吐露した。
選手が話すごとにしんみりとした空気が流れたそうだが、森山監督はこう熱いメッセージを伝えた。
「言ったことは本気か!? 本気か? 絶対だよな! 言って何日か後に忘れたことはなしだぞ!」
“口だけ”では生き残れない。
ただ、今大会でチームが解散するわけでない。来年10月のU-17W杯に向けての競争は始まっている。いつまでも感慨に浸っているわけにはいかないし、何より森山監督は何度も「サッカー小僧が大好きなんです」と言うように、“口だけ”の選手をとことん嫌うし、簡単に見抜いてしまう。
「1カ月後に所属チームでの試合を観に行ってたら、全然変わっていなかったり、成長していないこともある。もしかすると、半分以上の選手は(今回の言葉を)忘れてしまうかもしれない。でも、忘れずにやり続けているやつだけがこの代表に“帰って来る”んです。これから先はどんどん壁が高くなって行くからこそ、這い上がれるやつしか残らない。
それはU-17W杯もそうだし、プロの世界に飛び込んで行くこともそう。その先はプロでレギュラー、A代表……と毎回よじ登らないといけない。さらにストレス、プレッシャー、つらさを感じる厳しい世界が待っている。だからこそプレーだけでなく、人間性や人間力を磨いて欲しい。日頃の取り組みから成長してほしい」
1年後、ペルーの地を踏みしめる“選ばれし者”の候補生に向けて。森山監督はいつもと同じ、熱く、厳しく、そして愛情にあふれた言葉を送った。さらなるハイレベルな紅白戦を楽しみにしつつ、W杯で森山監督が作り出すであろう“戦う集団”に期待したい。