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鬼木フロンターレは隙を排除する。
ボール奪取で等々力劇場に響く拍手。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/10/04 11:00
長崎戦は2-1のスコア以上の完勝だった。それでも満足しない様子に、川崎フロンターレの志が見えてくる。
実はリーグ最少の21失点。
失点をしないことが、その前提となるのは言うまでもない。無失点に対するこだわりは、かつてないほど強い。それは数字が物語っており、現在リーグ最少失点である21を記録。等々力陸上競技場に限れば、第27節の名古屋グランパス戦で前田直輝に失点するまで、リーグ戦ではホーム6試合連続無失点を続けた。
その上で、センターバックの奈良竜樹は、相手がボールを保持しているときにも守備で恐怖を与えることが、より隙のないチームにつながると付け加える。
「ブロックを組んだ時の強度を高める。そういうところを全員で共有できればもっと隙のないチームになる。相手を引き込んでのカウンターも武器になる。相手に(ボールを)持たせているけど、それに恐怖心を持たせる。(相手は自分たちが)持っていても恐怖だし、僕たちがボールを持っていても恐怖。そういうネガティブ(な状態)にさせることが大事」
守備でも凄みを見せて圧倒する戦いを――。
興味深いのは、無失点試合を積み重ねてきたことで、等々力全体の雰囲気も少しずつ変わりつつあることだ。
玄人好みのプレーに起こる拍手。
かつて川崎の試合といえば、その圧倒的な攻撃力ゆえに点の取り合いが多く「等々力劇場」と言われていたが、現在は少しだけ違う。攻撃に沸く光景は変わらないが、高い位置から連動したプレッシングで相手のビルドアップを食い止めたとき、素早い切り替えや激しい球際でボールを奪ったときなど、守備の局面で観客がそれに呼応し、歓声の沸き起こる数が増えているのだ。
例えば、今年入団した新人・守田英正。彼は自分がボールを奪った際に鳴り響く拍手がたまらなく心地良いと話す。
「等々力でやる雰囲気は他とは違いますね。ボールを奪ったときに拍手が起きたりするので、やる気が出るし、やりがいがあります。派手ではないプレーでもサポーターが沸いたりする。サッカーをやってない人じゃないとわからない部分でも、フロンターレのサポーターはわかっている」