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矢野貴章が監督交代の日に訴えた事。
ようやく上向いた新潟と自責の念。
posted2018/09/22 17:00
text by
大中祐二Yuji Onaka
photograph by
J.LEAGUE
底なしの恐怖すら感じる落下がようやく止まったのは、それから1カ月以上も経ってのことである。
J2リーグ第31節、アウェイで愛媛FCに0-0で引き分け、アルビレックス新潟の連敗は6でストップ。ヘッドコーチの立場で暫定的に指揮を執った2試合を含め、片渕浩一郎監督がチームを率いて4試合目のことだった。
15年ぶりにJ2を戦う新潟は、1年でのJ1復帰に勇躍のシーズンを送るどころか、この夏、混乱の極みにあった。
7月の終わり、キャプテンのMF磯村亮太がJ1のV・ファーレン長崎へ完全移籍で去った。2015年オフに大井健太郎がジュビロ磐田へ、2016年オフに小林裕紀が名古屋グランパスへ、そして昨年オフに大野和成が湘南ベルマーレへ移籍したのに続く、4年連続でのキャプテンの移籍。
それだけでも穏やかではないが、磯村は昨夏、名古屋から新潟に完全移籍で加入し、厳しいJ1残留争いで奮闘、再起を図るチームのリーダーに任ぜられたシーズン真っ最中に移籍する異様さだった。
何度も聞いた、チームが壊れる音。
1週間後の8月8日。クラブは今シーズンから指揮を委ねていた鈴木政一監督の契約を、前日付けで解除したと発表した。シーズンの3分の2近い27試合を終え、8勝5分け14敗で19位に低迷することを受けての、事実上の解任だった。その時点で21位ロアッソ熊本との勝ち点差はわずかに6。J3自動降格圏が、すぐそこに迫っていた。
これは、地方のとあるJクラブで、混乱が1つのピークに達した夏の日の物語である。物語の主人公は、ベテランFWの矢野貴章。だが彼の登場は、ずっと後のことになる。
かつてジュビロ磐田で一時代を築き、地域リーグ、大学サッカー、年代別の日本代表とさまざまなフィールドで指導してきた鈴木監督を招へいした今シーズン、チームが壊れる音をたびたび聞いた。
ホームでヴァンフォーレ甲府に1-5と大敗した第17節。アルウィンの大声援の中、完全に沈黙したアウェイでの第22節・松本山雅戦(●0-2)。激しい点の取り合いの末に土壇場で3-4と逆転された第25節・東京ヴェルディ戦。
そしてうだるような暑さの中、ただただ失点を重ねた第27節の大分戦(●0-4)。いずれも、痛恨という言葉に収まり切らない敗北ばかりである。