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矢野貴章が監督交代の日に訴えた事。
ようやく上向いた新潟と自責の念。 

text by

大中祐二

大中祐二Yuji Onaka

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photograph byJ.LEAGUE

posted2018/09/22 17:00

矢野貴章が監督交代の日に訴えた事。ようやく上向いた新潟と自責の念。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

矢野貴章は決して口数が多いタイプではない。その彼が問いかけたからこそ、他の選手たちにも熱が届いたのだろう。

社長の口から具体的な話はでなかった。

 大敗の大分戦から3日後、8月8日のトレーニング前に、クラブの中野幸夫代表取締役社長は鈴木監督の契約解除について選手、スタッフに説明。続いてメディアの囲み取材に応じた。

「27節が終わって19位という現在の成績、現状を見て、その責任は社長である私にすべてあります。サポーターのみなさん、株主、スポンサーの方々、新潟という地域を思ったとき、残り15試合の向き合い方は非常に重要で、監督の契約解除を決断しました。正直、急な決断ですので、今、動いておりますけれど、後のことは決定次第お伝えしたいと思っています」

 では、契約解除せざるを得ないところまで状況が悪化した原因は何か。どのように軌道修正するのか。今からクラブ・チームはどこに向かうのか。20分近い囲み取材において、具体的な話はなかった。

普段は物静かな矢野貴章が……。

 2016年は吉田達磨監督、昨年は三浦文丈監督と、いずれも新任の指揮官がシーズン途中に成績不振のため、交代となった。今回の鈴木監督もそうだ。そして、3年連続で後を継いだのが片渕ヘッドコーチである(前2回はコーチ)。

 鈴木監督の契約解除が発表された日のトレーニングは、多くの選手が声を出し、球際は激しく、緊張感もスピード感も強度も高いものになった。最後はいつものようにピッチ上に選手、スタッフが集まって円陣を組み、トレーニングは終了した。

 そのとき、今年で34歳になったベテラン矢野貴章が仲間に問いかけた。昨年、5シーズンぶり2度目の新潟復帰を果たした矢野は、普段は物静かでマイペース。そんな彼がチームの中心で皆に訴え、意見する光景は珍しいものだった。

「やらなければならない状況ではある。でも、やれるんだったら、何で今までやらなかったのか」

 割り切れない思いを整理するために、身振り手振りを交えながら話す必要が矢野にはあった。

【次ページ】 「じゃあ何で今までやらなかったのか」

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