濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
DDT王座戴冠の里村からアイドルまで、
女子プロレス、夏の百花繚乱。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byDDTプロレスリング
posted2018/09/12 10:00
里村明衣子は、9月4日のDDT新木場大会では6人タッグマッチで入江茂弘とも真っ向勝負。9.23後楽園大会では里村vs.入江vs.ディーノの3WAY王座戦が行なわれる。
“インディー化”していた女子プロレス。
'80年代にはクラッシュギャルズが少女たちを熱狂させ、90年代は団体対抗戦が男性ファンを惹きつけて次々とビッグイベントが開催された。
だがそれ以降、女子プロレスは“インディー”になった。
会場は小規模、地上波で扱われるとしても、それは物珍しさからだ。求められるのは“美女レスラー”や“親の反対を振り切って”選手になる物語だったりする。
里村はそういう時代に、地域限定かもしれないがアスリートとして「1日に5回くらいテレビで見」る存在になったのだ。
東京女子プロレス好調の要因は……?
インディーだから選手志望者は多くない。体格や運動神経にはかなりのバラつきがあるし、芸能界からの転身や二足の草鞋を履く選手も。
そんな業界で急成長しているのがDDT系列の東京女子プロレスである。
2013年に旗揚げ、2016年に初の後楽園ホール大会を開催すると、昨年は2回、今年は3回の“聖地”進出を果たした。
8月25日の後楽園大会では、シングル王者にして団体一期生の山下実優が優宇を相手に身も心も削り合うようなタフマッチを展開している。その一方で、アイドルグループ・アップアップガールズ(仮)の妹分として結成されたアップアップガールズ(プロレス)の4人がアイドル活動と並行してレスラーとして成長していく姿にもファンは注目している。
“筋肉アイドル”才木玲佳はシングル、タッグとも戴冠歴のあるトップ選手だし、アイドルとしてDDTの大会にゲスト出演したら「プロレスに向いてる」と誘われた元LinQ・伊藤麻希の存在感は並外れている。観客動員が好調なのも当然と言えば当然で、既存の“女子プロ文脈”に当てはまらない独自性があるのだ。
実は東京女子プロレス所属選手には「三禁(酒、煙草、男)」ルールがある。アイドル選手がリング上で歌うのもおかしなことではなく、ビューティ・ペア、クラッシュギャルズだってやっていたこと。女子プロレスの“古(いにしえ)の文化”を現代のアイドル文化と重ね合わせるようにリメイクしたと言えばいいだろうか。