濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
DDT王座戴冠の里村からアイドルまで、
女子プロレス、夏の百花繚乱。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byDDTプロレスリング
posted2018/09/12 10:00
里村明衣子は、9月4日のDDT新木場大会では6人タッグマッチで入江茂弘とも真っ向勝負。9.23後楽園大会では里村vs.入江vs.ディーノの3WAY王座戦が行なわれる。
全盛期を「新たに作る」つもりで。
ちなみに甲田哲也代表はDDTの臨時GMも兼任しているのだが、9.8DDT成増大会は「モーニング娘。'18個別握手会参加のため」欠席している。これはもうGM就任前から決まっていたスケジュールだから仕方ないというか、そういう代表が手がける団体だから東京女子は面白いのだと言うしかない。そして、そんなGMがいる団体に君臨しているのが“女子プロレス界の横綱”里村だったりもするのである。
おそらく、藤本が目指す女子プロ全盛期は“戻す”ものではなく“新たに作る”ものになるだろう。
男子団体のチャンピオンになるほどの実力者がいて、アイドルもいる。アイスリボンの星ハム子といぶきは親子レスラー。藤本も「ウチの会社は産休手当、育児休暇があるので、選手としてしっかり使いたいです。もう五つ子とか産みたいですよ(笑)。子供もほしいしプロレスもあきらめないです、私は」と言う。
横綱もアイドルも、社長も母親もいる。これから新たな女子プロ全盛期がくるとして、その原動力になるのはインディーの自由さがもたらした選手のあり方の幅広さだろう。
「なんでもなれる!」自己実現の多様性。
世界最大の団体・WWEが女子選手だけのPPVビッグイベントを開催すると発表したのもこの夏だった。リング上でアナウンスしたのは首脳陣の1人であるステファニー・マクマホン。曰く「女性たちはどんなことだってできるし、なりたいものになることができる」。
どこかで聞いたことがあるなと思ったら、(基本的には)女児向けアニメの『HUGっと! プリキュア』の決め台詞が「なんでもできる! なんでもなれる! 輝く未来を抱きしめて!」だった。この言葉に勇気づけられた大人の1人が伊藤麻希だった。アイドルとしては大成しなかったがプロレスに自身の可能性を見出した伊藤は「自殺したくなったら伊藤を見ろ!」とリングで叫んだことがある。「明日も生きてていいかな、くらいの勇気ならあげられるから」。
女子プロレスの世界にはいろんな選手がいて、試合ぶりもさまざまで、きっと「こうしなければいけない」という正解はない。そして、そこにこそ可能性がある。女性が「なんでもなれる」時代には、「どんな女子プロレスラーにだってなれる」のだ。