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錦織圭とジョコビッチの差は、
「正気」と「狂気」のスイッチ。
posted2018/09/11 11:30
text by
吉谷剛Tsuyoshi Yoshitani
photograph by
Hiromasa Mano
ノバク・ジョコビッチにあって、錦織圭にないものは何か。
それは正気と狂気のスイッチなのでは。
全米オープン準決勝で錦織は再び敗れ、ジョコビッチ戦の連敗は14に伸びた。最後に勝ったのは錦織が準優勝した4年前の全米準決勝。この天敵は今大会の1、2回戦のように格下との対戦ではやや手を抜く姿を見せるが、それは「正気」の意識だけでプレーしているから。
フェデラーやナダル、脅威を感じている錦織が相手になると一気にレベルを上げ「狂気」の部分を見せてくる。
錦織も実感するギアチェンジ。
錦織自身もそのギアチェンジを実感する。準決勝後の記者会見ではジョコビッチについてこう語った。
「自分とやるときは画面で見ているより強いなって感じる。(今大会は彼の)調子が上がっているので、強いのは試合前から感じていましたけど、この前のクレー(マドリード、ローマ)だったり1、2段階レベルを上げてくるのはなんとなく感じますね」
本当の敵にだけ鬼のような素顔を明かす仮面ジョコは、決勝のデルポトロ戦でも格下には見せない奥の刃を見せ、大男に対して咆哮しながら、限界まで追い詰めていった。
プレーの大半は「正気」で進む。その傾向は数字やスタッツに表れる。
ジョコビッチについては、大会中にニューヨーク・タイムズ紙に掲載された記事で彼の戦術面の特徴が分析されていた。「リターン巧者のジョコビッチを見よ」というタイトルで、スポーツ科学者のマーク・コバクス氏によるリターンのコースの解析だった。