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錦織圭とジョコビッチの差は、
「正気」と「狂気」のスイッチ。
text by
吉谷剛Tsuyoshi Yoshitani
photograph byHiromasa Mano
posted2018/09/11 11:30
天敵ジョコビッチにまたしても敗れた錦織圭。それでも全米ベスト4にまで実力が戻ってきたことも事実だ。
狂う前に倒すか、それとも……。
準決勝でもラリーの途中から狂気モードに入ったジョコビッチのショットが何度も錦織をおそった。「上書きされて鋭い球が飛んできて、主導権を握れなかった」と錦織。頭の中に入れていた対策は「何かを試す前にミスが出てしまったので、そこまでいけなかった」と、不発に終わったことを明かした。
狂気への対策が難しいのは、その本質が数字には表れないからだ。傾向もない。流動的な連続したプレーの中で、アドレナリンが頂点に達した中で、狂気は突如として素顔を見せる。狂気のスイッチを持つ相手に勝つには、そのスイッチが切り替わる前に倒すか、自分もスイッチを手にして狂気で対抗するしかない。
いまの延長上にジョコビッチへの勝利はない。何かを変えなければいけない。狂う前に先手を打って倒すか、相手以上に狂って倒すか……。
どちらかの道を選ばなければ、この長いトンネルは抜けられない。