猛牛のささやきBACK NUMBER
山岡泰輔が見つけた「1つ上のギア」。
オリックスのエースにまた一歩前進。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2018/09/07 07:00
いかにプロでも、体験して分かることはある。山岡泰輔は中継ぎの経験を先発の能力に見事に転化して見せた。
体験しないとわからなかった中継ぎのこと。
腹をくくった山岡は、8月1日から11日までに6試合に登板し、自責点0と結果を残した。すると、金子千尋が登録を抹消されたこともあり、山岡は15日の埼玉西武戦で先発に復帰。そこから3連勝した。
その3試合は打線が序盤に援護してリードを奪っており、逆に前半戦の勝てなかった間は、2、3点以内で試合を作っても援護に恵まれなかった。単に打線との兼ね合いだと言ってしまえばそれまでだが、中継ぎを経て何かが変わった、とも考えられる。
山岡は「(勝てなくて)迷ったからこそ新しいものが見つかるし、あそこで結果が出なかったからこそ中継ぎをやらせてもらって、そこで得たものがある」と言う。
「中継ぎの人の気持ちやしんどさがわかったことがその1つですね。先発が突如崩れたら、ブルペンはいきなり準備しなきゃいけなくなるからきつい。それに(先発が)四球、四球でピンチを作ったり連打を浴びて、でも結局0に抑える、ということが続くと、中継ぎの人はずっと準備をしっぱなしになるからそれもきつい。
そういうことを経験できたので、できるだけ球数を少なく、四球やランナーを出さないようにして、中継ぎの人がなるべくムダな準備をしなくていいようにするのも先発投手の役割の1つだと考えるようになりました。そういうことが頭に入るだけでも違うと思います」
球は弱いのに勝ち頭の投手から学ぶ。
また、今季9勝2敗でチームの勝ち頭となっているアンドリュー・アルバースの投球も研究した。捕手の若月は言う。
「球自体は山岡の方がいいわけですからね。なんで自分よりもはるかに球が弱いピッチャーなのに空振りが取れるのか、なんで130キロそこそこの球で打ち取れるのか、考えたと思いますよ。
例えば、アルバースは1球1球の投球間隔が短い。そういうテンポや、タイミングのずらし方、同じまっすぐでも強さを変えたり、打者の右左によってプレートの踏む位置を変えたり。そういうのを山岡もいろいろと勉強していましたし、僕も『アルバースはこういうふうに考えてるらしいよ』と伝えたりしました」