“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
公立校の市立船橋に胸スポンサー。
部活の概念を高校サッカーが変革!
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/09/06 08:00
「マイナビ」の胸スポンサーが入った市立船橋のユニフォーム。スポンサーは高校サッカーのトレンドとなるか。
オーバーした分は自己負担。
ただチームには試合に出場できなかったり、出場時間がわずかしかない選手もいる。プレミア登録30人の中で、ベンチから外れた選手は実戦経験が失われてしまう、という懸念もある。年4度の選手入れ替えの時、出場時間の上位であるGKとフィールドの上位13人はプレミアリーグでのプロテクト選手になる仕組みがあるから、ますます補助要員は重要になってくる。
さらに、Bチーム同士などが練習試合をすることもあるため、1回の遠征では選手だけでもトータル25人は連れて行きたいところ。そうなるとスタッフも前述の2人だけではなく、GKコーチやトレーナーを含め、4~5人を連れていきたい、ということになる。
そうなると移動費は、20人分で補助されない部分の35%、それに加えて規定人数をオーバーしている1~10人分は、すべて持ち出しとなる。
さらに、近年では外国人観光客の増加により、東京や大阪、名古屋、福岡などの大都市圏のホテルを20~30人単位で確保することが難しくなってきているのだ。現実問題として、1泊6000円以下の宿を探すのは非常に難しくなっており、オーバーした分はチームの自己負担となる。
青森山田・黒田監督の見解は。
補助を受けていても、それ以外の支出がさらに大きくなっているため、青森山田高校は青森から首都圏、静岡、愛知、富山をすべてバス移動している。彼らは間違いなく日本一の移動距離を味わっているだろうチームだ。この方針について、黒田剛監督はこう話している。
「本当は新幹線や飛行機で移動した方が時間的にも良いのかもしれませんが、やはりこれだけの広範囲の移動となると、交通機関の利用はコスト的に莫大なものなってしまう。これがバスであれば移動費はかなり抑えられます。もちろん、移動時間は長くなってしまいますし“長時間移動→試合→長時間移動”の繰り返しは、選手たちにとっては相当タフな環境であることは間違いありません。
ですが、逆に言えば鍛えられるものもある。すべてが恵まれている環境では、工夫する力や自分で考える力を奪ってしまいかねません。バスの中で時間をどう有意義に過ごすか、試合に向けてどうコンディションを整えるのか、さらに試合を振り返ることで、自分のプラスにしていけるか……。
それにバス内は選手、スタッフとの大事なコミュニケーションの時間にもなるんです。トータルで考えると、バス移動が一番効率的で、有効でもあるんです」
与えられた環境で、メンタル面も含めて精一杯の創意工夫をしていることが分かる。それでも、やはり……チームにかかる負担は大きいと言わざるを得ない。
これまでのいわゆる「部活動」は生徒の自主的、自発的活動という認識で、受益者負担の原則が働いていた。だが、各部活が昔とは違って数多くの大会に参加するようになった現在は、当然昔ながらの部費などではその活動はまかないきれず、自己負担にしても限界を越えつつあるのが現状だ。