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J3降格危機の新潟に現れた救世主。
梶山陽平はピッチ内外で“つなぐ”。
text by
塚越始Hajime Tsukakoshi
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/08/29 11:00
新潟が梶山陽平を獲得した理由は「流れを変えるため」だという。だとすれば、彼以上の適任はいないかもしれない。
同世代が次々と引退していくなかで。
チームの「柱」として、早くから相手の厳しいマークに苦しめられ、ヒザにはかなりの負担が掛かっていた。結局、自身が中心選手になるはずだった'04年のアジアユース(現・U-19アジア選手権)も左膝の怪我で辞退している。
患部にメスを入れて復活したが'07年に同箇所を骨折。さらに近年は右膝も傷めて長期離脱を強いられた。
言い換えると、プロキャリアの15年間は怪我とともに歩んできた。もちろん、怪我をすることなど本人は望んでいなかったはずだが、平山をはじめ同い年の選手が徐々に現役を退くなか、彼はその膝と上手く付き合ってきたからこそ、今なお戦力として必要とされているのだろう。
J3降格の危機を救う希望になれるか。
先日の大宮戦、梶山から惜しいスルーパスが放たれたものの相手にカットされた。それでも受け手のFW田中達也は、「カジは試合を作れて、1本1本のパスにメッセージが込められている。それをもっと感じ取っていきたい」と、期待を膨らませていた。
梶山も「タツさん(田中)はパスを受けてから出て行ける選手。一度受けてくれると、僕らボランチも前へ行ける。とてもプレーしやすかったので、パスを今度こそ通せるように、そのへんを僕個人的にもクリアできるように見直していきたいです」と話していた。
J屈指の優良な助っ人選手を擁し、数年前にはタイトルさえ狙っていた新潟が、J3降格の危機に瀕している。そのなかで梶山が希望の存在になっている。
普段は言葉の少ない梶山だが、常に自分自身と、あるいは相手選手と、チームメイトとも真剣に向き合ってきた。下町的な人情気質か、人の面倒見もかなり良いと聞く。
FC東京へ加入した選手や北京五輪代表チームに初めて招集された選手から、「カジ(梶山)にいろいろ面倒を見てもらった」という話をよく聞いた。人と人をつなぐボランチの彼は、ピッチ外でもつなぎ役=架け橋となっていた。