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水球女子代表問題とは何だったのか。
大本監督がSNSで伝えたかった本意。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byAFLO
posted2018/08/20 08:00
アジア大会を戦う水球日本女子代表。今回の問題が強化に影響を及ぼさないことを願う。
「悪意」のプレーに対する提言。
(4)が起きたことでこの事件はスキャンダル性を帯びたのだが、(4)と関連があるのは(1)だけだ。
記事によっては、(2)も(3)も(4)を引き起こす要因になっているような書き方をしているが、少なくとも大本は投稿した際(2)については知らされていなかったし、(3)についても特に問題視はしていなかった。これは第三者委も同様の見解である。
ただ、投稿のタイミングは(2)が起きた深夜だったため、この件を知ったゆえの文章だと勘違いされてしまったのである。
なお(2)に関し、猛抗議はパワハラに相当するという一部報道もあったが、第三者委は不問に付すとしている。結果的に(2)の当該選手を含む一部の女子選手が精神的ダメージを負い、合宿が打ち切られたとのことだ。
問題となった大本の投稿は、現在はFacebook上から削除されている。しかし関連ワードで検索すれば、文章はすぐに見つけることができる。
どの媒体も水着を破いたプレーに関し「悪意しかないのは明白」と書いている部分を抜粋している。ただこの指摘は選手批判というより、最後の「レフリーはこの行為を容認し……」という部分につながっている。8点差ゲーム(大本のFacebookでは10点差と書いてあったが事実誤認)で水着が計5枚も破れるなどというのは、やはり異常だ。そこまで強く接触する必然性がまったくない。
つまり要約すると、「悪意」が明白なプレーを容認していては日本の水球に未来はないのでは、という提言だった。
超攻撃的で常識を覆す大本の戦略。
大本の投稿に対する素直な感想を述べると、言葉の選択が少々不用意な感は否めないものの、「わかる」だ。もっと言えば「正論」だと思う。ただ、大本のこれまでを知らない人間が読んだら、ほとんど「わからない」だろうとも思う。
男子代表が出場した2016年リオ五輪の前後、私は何度となく大本を取材した。大本は従来の常識を覆す戦略で32年ぶりに日本を五輪出場に導いた。簡単に説明すると、前線で守備をし、カウンター攻撃をかけ続けるもの。「10点取られてもいいから11点取る」という捨て身の超攻撃型スタイルだった。
日本の水球はスピーディーで本当に魅力的に映った。「水球が」ではなく、「日本の水球が」おもしろかったのだ。