サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
通訳機はハマらずとも作戦はハマる。
西野朗監督の策士っぷりが半端ない。
text by
木本新也Shinya Kimoto
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2018/06/28 08:00
かつてこれほど采配で試合に影響を与えることに成功し続けた代表監督がいただろうか。
あのオフサイドトラップは「絶対にかけろ」。
ビルドアップではボランチの長谷部誠がセンターバックの間に下がり、3バックのような陣形から効果的なパスを供給。5月30日の親善試合ガーナ戦で3-4-2-1布陣をテストしたのは、前線からの圧力が強いセネガルをいなす伏線だった。
最も衝撃的だったのが、1-1の前半45分に自陣深く右サイドで与えた直接FKのピンチの場面。相手キックの瞬間に最終ラインを形成していた吉田麻也、昌子、酒井宏樹、長谷部、柴崎岳、乾、大迫、原口元気の8選手が一斉に縦方向に移動した。
セネガルの5選手をゴール前に置き去りにする鮮やかなオフサイドトラップ。香川真司と長友佑都はラインを上げた8選手と入れ替わるように自陣ゴール方向へダッシュし、万一の失敗に備えてカバーに入っている。連日の非公開練習で入念に確認していた巧妙な罠だった。
長谷部「監督は策士なので」
長谷部が一連のプレーを振り返る。
「あれは、ここ(ベースキャンプ地カザン)に入って最初からやろうという話をしていた。初戦もやろうとしたが、中(ピッチ内)でやろうという選手と、やめた方がいいという選手がいたので、止めた。
でも監督はその時もやってほしかったらしく『2試合目は絶対に(オフサイドトラップを)かけろ』と言っていた。
あれは相手との駆け引きの意味合いが強い。あの1本を成功したことで、相手は“また何かやってくるんじゃないか”となる。その分部が大きい。監督は策士なので」
単にオフサイドを取るのではなく、心理的に優位に立つ狙いがあった。