サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
通訳機はハマらずとも作戦はハマる。
西野朗監督の策士っぷりが半端ない。
posted2018/06/28 08:00
text by
木本新也Shinya Kimoto
photograph by
Kaoru Watanabe/JMPA
ロシアW杯で奮闘中の日本代表の監督会見には“恒例行事”がある。
グループリーグ第1戦のコロンビア戦の前日と試合後、第2戦のセネガル戦の前日と試合後。これまで計4度の会見を経験しても、いまだに西野朗監督(63)は同時通訳機の装着の仕方が分からずにいる。
同席した選手や広報担当に「やってくれよ」とおねだりして耳に着けてもらい、報道陣の笑いを誘うのが鉄板ネタ。2度リードを許す展開を追いついたセネガルとの激闘後の公式会見でも、第一声で「(装着方法が)本当に分からない」と首を捻っていた。
肩肘は張らず常に自然体。セネガル戦の前日会見では海外メディアから対策を問われ、「乾(貴士)と大島(僚太)が5kg増量、5cm身長を伸ばせという調整に失敗して、それ以外のところで対応することを余儀なくされている」とジョークで応じた。
先発メンバーに関する質問には「あまりお話はしたくない」としながらも、「基本的にはスタートメンバーはコロンビア戦(と同じ)と現時点では考えています」と正直に説明。翌日の試合では“予告先発”通りのメンバーをピッチに送り出した。
日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「40年来の付き合いだが、西野さんが焦った姿を見たことがない。いつも落ち着いている。神戸の監督を解任された時でさえ、冷静だった」と証言する。
DF昌子源も「西野監督はいつも変わらない。常にクールで淡々としているので、安心感を与えてくれる。意図的かどうかは未知だけど、そのおかげで選手も落ち着けている」と明かした。
W杯で次々と采配を的中させる。
4月9日に電撃就任。限られた準備期間の中でチーム状況や対戦国との力関係を冷静に分析し、勝利の可能性を探ってきた。W杯開幕後は采配がズバズバと的中。特に第2戦のセネガル戦は冴え渡っていた。
1-2と勝ち越された直後の後半27分に本田圭佑をトップ下に投入。後半30分には岡崎慎司を途中起用して大迫勇也との2トップにし、本田を右サイドに移した。その3分後に本田が左サイドからのクロスに反応し、右サイドから詰めて左足で同点弾。岡崎がニアサイドでつぶれ役になったことも見逃せない。