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希望の八村塁、安定のファジーカス。
崖っ縁バスケ代表を変えられる2人。
text by

永塚和志Kaz Nagatsuka
photograph byYuki Suenaga
posted2018/06/22 11:00

韓国との1戦目はファジーカスが28得点、八村塁が17得点と、2人で日本の総得点の半分以上をあげる活躍を見せた。
外れたシュートをダンクで叩き込む八村。
一方の、八村。
ファジーカスがそうであるように、八村もまた日本代表がこれまで迎えたことのないタイプの選手だ。
ウィンターカップで3連覇するなど、その名をバスケットボールファンの間に轟かせることとなった明成高校時代から、彼の身体能力の高さは誰もが認めるところだった。その“怪物性”は、本場アメリカの、しかも強豪大学へ進学することで凄みを増した。
韓国との第1戦。ファジーカスとともに先発出場した八村は、17得点、7リバウンド、2ブロックの活躍で、日本のファンを感嘆させた。リバウンドを取ってそのままバックコートから勢いよくドリブルで攻め、そのままレイアップを決めるシーンが2度ほどあった。
第4クォーターには富樫勇樹が外したレイアップをそのまま両手でのダンクで叩き込んで会場をどよめかせた。これまで日本人選手にはなかったプレイを、さも簡単にやってのけた。
「すげえの来たな」
ベテランポイントガードの篠山竜青は、八村の加入についてそんな風に思ったという。彼をして「あの身体能力があれば、突っ込んでジャンプすればノーマーク」などと身も蓋もない言葉まで口にさせた。
NCAAトーナメントで見た精神的成長。
ただ、技術的、肉体的な進化だけではなく、精神的な部分の成長も見逃せない。
3月、アメリカ・アイダホ州ボイシーへ飛び、全米大学バスケットボール選手権(NCAAトーナメント)でのゴンザガの試合を取材した。
トーナメントの1回戦。かなり格下の相手にゴンザガは苦戦したが、その中で八村もわずか4得点に終わった。僅差の試合終盤には大事なフリースローを立て続けに落とした。
しかし次の試合、本来先発のチームメイトに代わって出場した八村は25得点、4ブロックの活躍で味方を勝利へと牽引した。
「前の試合の彼は自身の運動能力と天賦の才能を生かせず、プレイがソフトだったが、今日の彼はタフで、“虎”だった、“キラー”だった」
試合後、ゴンザガのマーク・フューヘッドコーチは八村のプレイを振り返ってそう讃えた。