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“最弱”イタリア、W杯のなでしこ。
「魂の入った」日本代表を見たい。
posted2018/06/19 12:30
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph by
Getty Images
勝てば、いいのか――。
4年に一度、この時期が来ると考える。勝たなければ、何も残せないのだろうかと。勝てなくても、心に響き、心に残り、心の糧となる、そんな戦いもあるのではないか。
「強い魂が入った試合を、チームとして見せないといけない」
覚悟をそう言葉にしたのは、強い逆風にさらされるサッカー日本代表の長友佑都だ(6月10日公開の日本サッカー協会公式YouTubeチャンネル「JFATV」より)。自身を含めたチームを鼓舞する意図もあったのかもしれない。
魂とは何か。
新明解国語辞典(三省堂)によると「(1)生きている動物の、生命の原動力と考えられるもの。死後は、肉体を離れるといわれる。(2)仕事をささえるものとしての、人間の精神。気力」。広辞苑(岩波書店)によると「(1)動物の肉体に宿って心のはたらきをつかさどると考えられるもの。古来多く肉体を離れても存在するとした。霊魂。精霊。たま。(2)精神。気力。思慮分別。才略。(3)素質。天分」。
魂を込めるとは、「生命の原動力、精神、気力、素質、天分」を込めるということか。
日本の模範たりえるユーロ2016のイタリア。
4年に一度の大舞台、ワールドカップで長友の言う「強い魂が入った試合」を見せてくれたら、多くの人の心に響き、心に残り、もしかすると心の糧となるかもしれない。結果が伴えばより良いが、勝てなくても何かを残せるかもしれない。
長友をはじめとする日本代表の模範たりえるのは、やはり逆風にさらされていたユーロ2016のイタリア代表だ。大会前の期待が低かったのは、イタリア代表史上「最弱」という見立ての陣容のせいだった。
とくに前線は、ロベルト・バッジョ、フランチェスコ・トッティ、アレッサンドロ・デルピエロのような正真正銘のワールドクラスはもちろん、好タレントすら擁していないと酷評された。勝利至上の国だけあって、タイトル獲得の見込みがない代表には冷たかった。