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“最弱”イタリア、W杯のなでしこ。
「魂の入った」日本代表を見たい。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byGetty Images
posted2018/06/19 12:30
60年ぶりにW杯出場を逃したイタリアだが、ユーロ2016での戦いぶりから日本も学べるところがある。
4年後の決勝でも見せた逞しさ。
2015年のワールドカップ決勝は、さらに厳しい戦いとなった分、なでしこジャパンの逞しさをより強く印象付けた。
開始3分で最初の失点を喫すると、5分、14分、16分と立て続けに追加点を奪われ、スコアは瞬く間に0-4となる。サッカーの4点差は言うまでもなく大差で、しかも相手はアメリカだ。5点目、6点目が決まりそうなシーンも続いた。腰が引けても、おかしくない。
ところが、なでしこジャパンは反撃に打って出る。27分に1点を返すと、52分には2-4と2点差に。スコアが2-5に開いた54分以降も、前へ、前へと、チャレンジし続けた。何度倒されても立ち上がり、足が痙攣しても起き上がる。ひたむきな戦いぶりは、ある意味では2011年大会の決勝以上に心を動かすものだった。
長友が口にした覚悟は、もちろん「精神一到何事か成らざらん」といった根性論などではない。ユーロ2016のイタリア代表があれだけ走れたのは、鍛錬の賜物だ。
それでも、こう思う。精神や気力の支えなくして、あれだけ走れたか。低い前評判への反発心が底力を引き出し、相手に追いつけるかどうか分からなくても必死に走り、ボールに届くかどうかのぎりぎりでも必死に足を伸ばせたのではないか。「強い魂が入った試合」とは、そうやってあがき続けるプロセスの積み重ねではないか。
「強い魂が入った」プロセスを。
逆風の中、ロシア・ワールドカップを迎える日本代表には、あがき続ける理由があるだろう。長友はこう言っていた。
「これまでにないくらいの危機感が僕にはあります。このままいけばワールドカップでは勝てないと思いますし、3戦全敗もありえるのかなと思っていて。(中略)やっぱりまず戦う部分、あとは相手よりも走る。そういう基本的なことができないと試合には勝てないですし、強い魂が入った試合というのをチームとして見せなくてはいけないと思います」
心に響き、心に残り、心の糧となる、そんな「強い魂が入った」プロセスを見せてくれたら――。
勝とうが負けようが、自然とスタンディングオベーションが起こるのではないだろうか。