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ヒディンク采配が西野監督の憧れ。
ロマンに酔わず「強い選択」を。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2018/06/18 11:00
「想定外の展開でも、選手交代をひらめくことはある」という西野監督の試合勘も試されることになる。
結果が伴わなければ批判は必至。
同じことを日本代表でできるとは、西野も考えてはいない。
「自分たちにとってすべてがポジティブにゲームを進められたら素晴らしいが、現実的に戦わなければならない状況はある」と、就任以降に繰り返し話してきた。W杯への第一歩となるガーナ戦で3バックにトライしたのも、4バックのバリエーションを増やしてきたのも、ケース・バイ・ケースの対応力を高めるためだった。
長丁場で結果を積み重ねていくリーグ戦と異なり、日本代表が戦う国際Aマッチは刹那の戦いだ。監督采配の失敗が許容される範囲は、クラブより格段に小さい。
ましてや今回は、4年に1度のW杯である。ひとつひとつの采配が持つ意味は、とてつもなく大きい。マンチェスター・ユナイテッドに真っ向勝負を挑み、3-5の撃ち合いとなった'08年のクラブW杯のようなゲームを演じ、それが選手交代によるスリリングな展開だったとしても、結果が伴わなければ監督は批判を浴びる。
「つねに強い選択をしたい」哲学。
そういったことすべてを消化したうえで、西野監督はチームが勝つための采配を熟考していく。監督主導でゲームを動かすべきタイミングはあり、そこで最善の勝負手を打たなければ、W杯では活路を見いだせない。格上から勝ち点を奪うためにはどこかでリスクを背負うのが、日本の立場だからである。
「つねに強い選択をしたい」と西野は言う。日本代表を率いるずっと以前から、監督としての彼を貫く哲学だ。
スリル満点のサスペンス映画のようなゲームを繰り広げても、勝ち点を取りこぼしたら意味はない。サスペンスではなくサプライズを起こすための采配を、西野監督は選ぶはずである。
それが、彼にとっての「強い選択」なのだ。日韓W杯のヒディンクのように。勝負を仕掛けるタイミングを見誤らない。自らのロマンに酔いしれない。すべては、チームの勝利のために──。