藤田俊哉の日欧蹴球比較論BACK NUMBER
藤田俊哉が語る代表選手の“性分”。
「重圧に見えても、それすら喜び」
posted2018/06/18 07:00
text by
藤田俊哉Toshiya Fujita
photograph by
Getty Images
西野朗監督が選んだロシアW杯最終メンバー、日本代表23名がヨーロッパでの直前キャンプに臨んでいる。コロンビア戦を目前に控え、多くの不安を克服すべく最終調整を行っているところだろう。
日本代表のメンバーたちは、短期間での準備で西野監督がイメージする戦い方を表現しなければならない。そのうえ結果を求められるわけだから状況はきわめて厳しい。
だからこそ監督は、代表や所属クラブで幾多の修羅場を乗り越えて来たベテラン選手を中心にメンバーを組んだのだと考えられる。選ばれたベテランたちに掛かる責任と重圧は計り知れないが、その山を越えた時の充実感や達成感は選ばれた者の特権ともいえる。
それは体感したことのある者だけが知り得る特別な世界だ。
外からは重圧のかたまりにしか見えないが、当事者たちはそれをも喜びに変えてしまう。勝敗を決定づけるPKを任されて決める、リーグ優勝をかけた戦いを制する、そんな喜びを一度でも経験すれば、決して忘れることはできない。
私自身、ジュビロ磐田時代の1997年にJリーグを初めて制した試合、あるいは2003年のユトレヒト時代にPSVから決めたゴールなどは今でも鮮明な記憶として残っている。
国じゅうの声が届くくらいで丁度いい。
本田圭佑や香川真司などはヨーロッパ最高峰の舞台でそんな体験を何度もしているタフな選手なのだ。だから彼らは今日まで多くの結果を残し続けることができたし、多くの賞賛も受けてきた。
そんな選手たちに、余計なプレッシャーをかけてしまうのでは……などと気を回す必要はない。ストレートに大きな期待を寄せていい。
マンチェスター・Uやミラン、インテル、ドルトムントなどでプレーした経験や非日常的な毎日を過ごした価値は、そのような場面で必ず発揮されるもの。W杯でのプレッシャーは、彼らの大きなモチベーションに繋がるはず。国民からの大音量の声がヨーロッパで戦う彼らに届く、そのくらいで丁度いいと私は考えている。
結果は終わってみないとわからない。とにかく恐れることなく力強く前に進んでほしい。