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レスリング・パワハラ問題の遠因か?
日本代表と所属チームの指導兼務。
posted2018/06/17 08:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
6月14日、レスリングの全日本選抜選手権が開幕するのと時を合わせ、日本レスリング協会前強化部長の栄和人氏が会場の駒沢体育館で記者会見を開いた。テレビでの生中継は禁止、時間は20分限定という条件のもとでの実施だった。
五輪金メダリストの伊調馨選手へのパワーハラスメントを行なった当事者である栄氏が、どのような発言をするか注目されたが、第三者委員会などに認定されたパワーハラスメントの行為については、「コミュニケーション不足がこのような事態になった」「コミュニケーション不足が招いた」ということを繰り返し理由とした。
至学館大学における指導においては、大学からの要望、そして選手たちを「どうにかしてあげたい」という気持ちから、今後も続けることを明らかにした。
コミュニケーションが足りなかったという捉え方、指摘されていた点すべてに答えるものではなかったことからして、消化不良の感は否めない。それでも「これで一件落着」という空気がどこか漂う。
だが、検討されるべき問題点がいくつも置き去りになっていることは忘れてはならない。それはレスリング界だけにとどまる話ではない。
日本代表と所属チームの両方での指導。
例えば、今回の問題をあらためて振り返ってみると、日本代表と所属チームを指導する際の兼務という問題も浮かび上がる。
周知のとおり、栄氏は至学館大学の指導者であり、同時に、日本代表女子の監督でもあった。大学の指導者としては教え子を1人でも多く日本代表に送り出したいと願い、日本代表監督としては代表選考にかかわりつつ、選ばれた代表選手を強化して世界大会で勝たせなければならない。
そのとき、問題が生じる。
代表を指導する立場において、どこまで公平を保てるかだ。