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レスリング・パワハラ問題の遠因か?
日本代表と所属チームの指導兼務。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2018/06/17 08:00
「おわびしたい」と公式に謝罪した栄和人氏だが、伊調馨選手周辺からは依然、納得いかないとの声が出ているという。
競泳の平井伯昌・代表ヘッドコーチの場合。
現在はチームでも指導する平井伯昌氏が日本代表のヘッドコーチを務めるが、コーチ間のコミュニケーションに心を配り、代表になれば参加するコーチや選手はチームメイトであるという考えに基づいた組織作りは、相当意識して行われている。平井氏自身もまた、所属の違いに対する分け隔てはない。
レスリングに限らず、所属先の指導者と選手という関係がそのまま代表の場に持ち込まれているようなケースは、幾度か目にしたことがある。そのために、特定の選手の不利益になっているように思えた場面もあった。
今回のレスリングの問題は、隠されていたそうした問題点が白日のもとにさらされた、初めてのケースではないだろうか。
1人の人間の中で、立場を、思考を使い分けるのは、決して簡単ではない。それだけに、指導者が2つの場で指導にあたるときの姿勢、あり方は、レスリングに限らず、よく考えられるべき課題であるように思う。