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大谷翔平がしたPRP注射ってつまり?
手術が腱の交換なら、注射は治癒。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2018/06/16 11:00
強いボールを投げられるピッチャーにとって、肘への負担は避けられないものだ。田中も大谷も、万全での復帰を待ちたい。
脱毛、アンチ・エイジングにも使われる。
患部の場所によるらしいが、靭帯への注射自体は「あまり痛くない」らしい。多血小板血漿を作るのも含めて注射が終わるまでの時間は30分程度で、自分の血液から作り出されているので副作用を起こすことも滅多にないという。
PRPは1970年代にイタリアで発案され、1980年代に心臓の手術の際に使用されたという。有効な治療法として広まったのは1990年代というから、この20年から30年の間の話だ。
英語サイトを検索すると、最初は「脱毛」や「アンチ・エイジング=若返り」に関してのサイトが数多く登場したぐらいだから「美容整形」の分野でもよく知られているようだ。
それが外科、歯科、整形外科、皮膚科でも広まっている理由は、スポーツ選手だけではなく、普通の人でも加齢や肉体の酷使で軟骨が擦り減ったり、半月板を傷めたり、膝に水が溜まることが珍しくないからだろう。
手術は「交換」、PRPは「治癒」?
野球界ではヤンキースの田中将大投手(肘)やマリナーズの岩隈久志投手(肩)が行ったことで知られている。他にも大谷の同僚のギャレット・リチャーズや、今季すでに8勝を挙げている25歳のアーロン・ノラ(フィリーズ)、ザック・ウィーラー(メッツ)などが右肘を傷めながらPRP注射をしてトミー・ジョン(靭帯再建)手術を回避している。
靭帯等を傷めたフットボール選手も数多く利用しているそうで、ゴルフのタイガー・ウッズも膝の靭帯を傷めた際にPRPをした(手術もしている)。
いつだったか、とある日本のプロ野球選手から「プロ野球の選手なら、多かれ少なかれ肩、肘を傷めているものだ」と教えられたことがある。痛みが出て投げられなくなるかどうかは個人差があり、「どんな投手も精密検査をしたら腱の損傷が見つかる」と聞いた。
もしもプロ野球選手の肩、肘が「消耗品」なのだとしたら、今まではある意味、トミー・ジョン手術で「交換」してきたわけだ。それがこの治療法で「交換」することなく「自己治癒」できるのならば、今後は他の多くの怪我の予防と同様、たとえ痛みや張りがなく投げられても、大谷が昨秋やったように「予防手段」としてのPRPを行うようになるかも知れない。