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大谷翔平がしたPRP注射ってつまり?
手術が腱の交換なら、注射は治癒。
posted2018/06/16 11:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Getty Images
エンゼルスの大谷翔平投手が、右肘の内側側副靭帯を損傷して多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma=以下PRP)注射をしたというけれど――。
PRPって、なんだ? そう思った人は多かったのではないか。
血小板なら、分かる。
小学生か中学生の時、保健の先生から「切り傷などの怪我を治すのが血小板」と教えられた記憶がある。当時は「血小板が多い人は傷が治り易く、少ない人は怪我が治りにくい」と聞いて、『自分はどうなんだろう?』と少し怖くなったこともある。
各種の医療サイトで調べてみると、血小板は血液の成分のひとつであり、やはり、怪我をした際にその傷口に向かって移動して、開口部の周りに集まって止血に寄与するのだという。
血漿(けっしょう)は血液に含まれる液体成分の1つで、血液の55%を占める(残りは血球だ)。血液を試験管に取って医療用の遠心分離機にかけると、下の方に赤い塊(赤血球)ができて、上の方には淡黄色の液体が溜まるという。
赤血球については、これも保健の先生に「酸素を運ぶ」と教えられたのを覚えているが、淡黄色の液体=血漿については記憶がない。
損傷した靭帯を修復する成分。
血漿の役割は、血液細胞や栄養分、脂質やホルモン、老廃物を運搬することで、体内の環境を一定の状態に維持することや血液凝固、急激な温度変化の抑制をすることだという。想像するのはちょっと怖いが、血管の外に組織液としてしみ出すことがあり、これにより体内細胞に栄養分を供給することもあるらしい。
多血小板血漿(PRP)はつまり、「多」、「血小板」、「血漿」という3つの言葉からなる。その漢字を並び替えて書けば「血小板が多い血漿」だ。それを作るためには前出のように遠心分離して赤血球を除去する。
PRPには「成長因子」と呼ばれる成分が豊富に含まれており、患部に注射すると損傷した組織の修復が促進され、ただ単に安静にしておくよりも早く治癒できるという。
つまり、「血小板」という損傷組織を修復する血液内の成分を濃縮した「血漿」を、部分断裂した右肘に注射して「自己治癒」を促進するのが、PRPだと言える。