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トルコ系ドイツ人のギュンドガン。
自国サポのブーイングと“寛容性”。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2018/06/15 10:30
思わぬ形でブーイングを受けたギュンドガン(右)。エジルとともにドイツ連覇へのキーマンであることは間違いないが……。
多人種の中でも特に多いトルコ移民。
最近、僕はドイツの滞在許可証(ビザ)を取得できましたが、その発行を行なうドイツ各都市の外国人局には、毎日多くの外国籍、もしくは移民希望の方々が詰めかけています。ドイツでは渡航後に滞在許可の手続きを行なわねばならず、またその希望人数も多いため、役所が開く前の朝方、もしくは前日の夜から役所の玄関前に行列ができるのです。
そんな状況なので、ドイツでは日常生活の中でも多くの人種と触れ合う機会があります。多数を占めるのが、トルコからドイツへ移民してきた人々です。例えば、垂直の串に肉塊を刺して回転させながら焼いていく「ドネルケバブ」と呼ばれるトルコ由来の料理店は、街中のいたるところにあります。トルコ移民の就業先として重宝されているだけでなく、ドイツで暮らす人々のファストフードになっているなど、ドイツ文化に完全に溶け込んでいる印象があります。
僕の好物は「チキンケバブ」。薄くそぎ切りした肉をご飯の上にたっぷり載せてもらい、その上から甘くないヨーグルトソースをたっぷり掛けてもらうと、これがもう絶品です。
ケバブ屋のあんちゃんは、たいてい陽気で愛想が良いので、「ストップって言わないと、どんどん肉を載せちゃうよ~」なんて言ってサービスしてくれます。
エジルと一緒にエルドアン大統領と面会。
話を、ギュンドガンに戻しましょう。彼はトルコからドイツへ移民してきた両親の下、ドイツのゲルゼンキルヘンで生まれたドイツ人です(国籍はドイツとトルコの二重国籍)。ゲルゼンキルヘン近郊のボーフムのユースチームで頭角を現わし、ニュルンベルクでプロデビューを果たし、その後はドルトムント、そしてマンチェスター・シティ(イングランド)へステップアップ。まさにスター街道を驀進している選手です。
また代表の舞台でも、両親の母国であるトルコ代表入りを考えた時期もありますが、2011年にドイツ代表へ招集された際に「マンシャフト」の一員となることを決断し、今回のロシアワールドカップでも中核としてのプレーが期待されています。
そんなギュンドガンがドイツのサポーターからブーイングを浴びる理由は、5月13日に同じくトルコ系ドイツ人であるメスト・エジルとともに、イギリスのロンドンを訪問したトルコのエルドアン大統領と面会したことがきっかけです。