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田澤純一に3度目の復活はあるか。
MLB復帰への執念と「田澤ルール」。
posted2018/06/09 17:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
打球の行方を見届けた田澤純一は一瞬、天を仰いで踵を返し、ホームプレート周辺で歓喜の輪を作る相手チームの選手たちを横目に、ベンチに向かってゆっくりと歩き出した。
4月21日、敵地で行われたミルウォーキー・ブルワーズ対マイアミ・マーリンズ戦、5-5の9回裏に飛び出した中越えのサヨナラホームラン。屈辱のマウンドを降りたマーリンズの田澤は試合後、さっぱりした表情で「さあ、やりましょうか」と取材を促した。
「(投球)フォームを少し変えてタイミングをズラそうとしたけど、結果がこれなんでね。ああいう形(失策)で追いつかれたんで、何とか流れを断ち切りたかったですけど、あれだけ(13球)粘られて、最後はちょっと手詰まりになった」
チームはシーズン序盤にして優勝の可能性がほぼ絶たれるという、空虚な日常を過ごしている。弱小球団の不可思議な起用法とはいえ、打たれた理由や敗戦の責任は問われる。それからの1カ月、田澤は負の連鎖から逃れられなかった。彼がマーリンズからDesignated for Assignment(DFA)になったのは5月17日のことだった。
ボストン時代から感じた、もどかしさ。
今季22試合に投げて1勝1敗、防御率9.00。たった2カ月足らずだが、契約最終年を迎えたベテランのキャリア最低の成績にメジャーリーグは容赦ない。厳しい現実ではなく、当然の帰結だ。
しかし同時に、DFAは再起のチャンスでもある。田澤はマーリンズから自由契約となったが、6月4日にデトロイト・タイガースとマイナー契約を結んだ。
メジャーリーグに復帰するためではなく、もう一度、メジャーリーグで活躍するために。
「ボストンの最後の方から、自分の投げたい投げ方をしてないなっていう“もどかしさ”みたいなものがあった」
田澤がそう言ったのは、件のブルワーズ戦の後だった。マーリンズから自由契約になる前、彼は「2度目の再生」の途中にいた。