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田澤純一に3度目の復活はあるか。
MLB復帰への執念と「田澤ルール」。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2018/06/09 17:00
力強いストレートでレッドソックスのリリーフ陣を支えた田澤純一。まだまだ老け込む年齢ではない。
開幕直後、抑えていても不安はあった。
いつの頃からか、チームの練習メニューを終えると、外野フェンスに向かって1人で壁当てする姿が目立つようになった。
ど真ん中に投げて抑えることもあれば、厳しいところに投げたはずなのに打たれることもある。それは偶然なのか、理由があるのか。自分が投げたい球を投げているのか、否か。葛藤を抱えながら試行錯誤を繰り返していた。そして昨オフには以前よりも体の動きを意識してトレーニングをするようになった。
その成果は「2度目の再生」を目指した今季序盤、現れたかに見えた。
3月29日のシーズン開幕戦、シカゴ・カブス相手に2回を投げて無安打無失点と好救援。4月16日までの9試合で10回2/3を投げて被安打5、3失点(自責点2)で防御率1.69、三振を13個も奪っていた。それでも彼はこう言うのだった。
「去年に比べればいい投げ方をしているとは思うけど、まだ、しっくりこないところもあるし、今も完璧じゃない」
彼が好成績を残しながら感じた不安は的中する。それからの13試合、9回1/3を投げて被安打23、失点18と崩れ、防御率は17.36と苦戦。マーリンズでの短いキャリアに幕を下ろした。
「田澤ルール」が有効なら死活問題に。
メジャーリーグ10年目、「2度目の再生」の途中に訪れた、自由契約という名の最大のピンチ。32歳になったベテランの来季を考えれば、それは彼にとって死活問題になる。
いわゆる「田澤ルール=日本プロ野球のドラフト指名を拒否して海外のプロ野球チームと契約した選手は、その球団を退団した後も(社会人は)2年間は日本プロ野球のチームと契約できない」が有効ならば、彼は米国でしかプロ野球選手になれない。
野球賭博に関与して失格処分を受けた選手が、たったの1年で球界に復帰したことを考えれば何とも不思議なルールだが、ここではその是非を記さない。
とはいえ田澤にとっての「プロ野球」が今も米国にしかないならば、その最高峰はメジャーリーグであり、彼はタイガースでマイナーリーグからメジャーリーグへと這い上がるしかない。