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田澤純一に3度目の復活はあるか。
MLB復帰への執念と「田澤ルール」。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2018/06/09 17:00
力強いストレートでレッドソックスのリリーフ陣を支えた田澤純一。まだまだ老け込む年齢ではない。
もっとも目立たないヒーローのS.O.S。
1度目の再生は、2010年の右肘手術からの復活だった。
彼はその過程で先発投手から救援投手へと転向し、2012年にマイナーで確固たる実績を積み重ねてメジャー復帰。翌2013年にはメジャー屈指のセットアッパーとしてクローザーの上原浩治(現巨人)のサポート役に徹し、レッドソックスのワールドシリーズ優勝に貢献。2013年から2年連続71試合、60イニング以上を投げた。
当時は勝ち試合でも負け試合でも、接戦になると必ず、レッドソックスのマウンド上には田澤の姿があった。Junichi Tazawaの名は、口うるさいボストンの地元メディアでも「もっとも過小評価されているリリーバー」、「もっとも目立たないヒーロー」と称された。
しかし、明らかな登板過多によって彼の右肩が「S.O.S」を発した。2016年、彼は右肩の違和感を訴えて故障者リスト(DL)入りしてしまった。
「体が無意識に嫌がっていた」
田澤はマーリンズに移籍した2017年まで5年連続50試合以上に登板し、無類のタフネスぶりを見せつけたものの、防御率は2014年の2.86を境に、2015年の4.10、2016年の4.17、2017年の5.69と年々上昇。FanGraphs.comによると9回あたりの与四球率も2015年の2.0、2016年の2.5、2017年の3.6と悪化した。
2017年は奪三振率も前年の9.8から6.2と大幅に落ちた。空振り率も2016年の13.0%から2017年は8.8%と落ちている。
「肩、肘に不安があるわけじゃないんです。たぶん、体が無意識に嫌がっていた。それはボールを離す瞬間に『あっ、これ(打者にタイミングが)合うな』って分かるぐらいだった」
レッドソックス時代は最速で平均時速94.9マイル(約153キロ)あった速球も、今年は92.0マイル(約148キロ)まで落ちている。
「ボールを離したいところより気持ち、高い。どうやってもそこに行かない。やっぱり高いし、どうやってもそこになる。打たれるのが悔しいからってガムシャラに腕を振って球速が出ても、簡単に打たれたりする」