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アルゼンチン中が溺愛、カニーヒア。
ブロンド長髪と素朴さは当時のまま。 

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藤坂ガルシア千鶴

藤坂ガルシア千鶴Chizuru de Garcia

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photograph byGetty Images

posted2018/05/29 08:00

アルゼンチン中が溺愛、カニーヒア。ブロンド長髪と素朴さは当時のまま。<Number Web> photograph by Getty Images

今も長髪かつ金髪のカニーヒア(中央)。昨年1月、当時インテルでプレーしていたバネガ(右)、パラシオと。

W杯初戦での先発落ちに悪態をついた。

 現在51歳になったカニーヒアだが、その雰囲気は昔のまま。当時のスタイルが決して誰かの真似ではなく、独自のものであったことを証明している。ちょっとしゃがれた声で、何でも気取らず率直に話すところも全然変わっていない。変わったところがあるとすれば、年月を経て、話す内容が俄然興味深く面白いものになったことくらいだ。

 例えば先日、スポーツ専門局のサッカー番組にゲスト出演した際に語った'90年W杯でのエピソード。アルゼンチンは初戦のカメルーン戦で0-1の惜敗を喫したが、あの試合で先発メンバーに選ばれず、後半から交代出場したカニーヒアは前半、アルゼンチン代表の不甲斐ないプレーをベンチで見ながら「よし、これでいい。このままいけばそのうち自分が入るだろうから」と思ったそうだ。

 ディフェンディング・チャンピオンなのに、カメルーン相手に守備的布陣で挑んだ当時のカルロス・ビラルド監督に対する怒りを隠すことができず、ベンチでも本人に聞こえるように悪態をついていたという。4年前のブラジルW杯、リオネル・メッシがボスニア・ヘルツェゴビナとの初戦のハーフタイムに、「我々はアルゼンチンなのだから、積極的に攻めないと」とアレハンドロ・サベージャ監督に訴えたことを彷彿とさせる話だ。

マラドーナ監督によるサプライズ招集!?

 また'90年イタリア大会で、W杯史上初となるブラジル戦での勝利を決める貴重なゴールを叩き込んだあと、喜びを爆発させることなく意外なほど冷静だったことについて理由を聞かれると、「相手はブラジルだろう。残り10分で何が起きてもおかしくなかった。特にW杯のような舞台では何が起きるかわからないから」と答えた。

 ブラジル国民を悔やませ、アルゼンチン人サッカー選手としては至福の瞬間だったにも関わらず、カニーヒアは実に冷静だった。当時の映像を見返せば、その冷静さがシュートを打つ直前にGKタファレルをかわした技巧的フェイントに表われていることに気づく。

 さらに、出場できる自信があった'98年大会に招集されなかったため、後日ダニエル・パサレラ監督に直接抗議したこと。親友マラドーナが監督を務めた2010年大会の数カ月前に、ビラルドから「今すぐ集中的にトレーニングを始めれば南アフリカに連れて行ってやる」と誘われたものの行動に移さず、43歳でもう一度W杯に出場するチャンスを逃したことを悔やんでいることも告白した。加えて近年、代表チームに対する執着心や帰属意識、情熱などが選手たちに不足しているとも指摘する。

【次ページ】 「サッカーに幸運などないんだ」

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