マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
清宮幸太郎の「左ヒジ」が気になる。
才能がある者だけに許された構え。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2018/05/08 08:00
ごく自然に活躍し始めているが、清宮幸太郎はまだ高卒1年目の18歳である。一体どれほどの才能を内に秘めているのだろうか。
すでにプロの常套手段を普通に使いこなしている。
5月2日の札幌ドーム。清宮幸太郎のプロ初安打は、「お見事!」のひと言だった。
楽天のエース・岸孝之を向こうにまわして、最初の打席だ。わずかに甘く入った146キロの速球を、ひと振りでジャストミート。打ってヒットになるボールを、ちゃんと見極めていた。打球はあっという間にセンターフェンスを直撃していた。
その後、2度の打席は、岸の意地に翻弄されて、チェンジアップで空振りの三振に仕留められたが、その翌日。ここでも、清宮幸太郎は本領の片鱗をキラリと光らせてみせた。
楽天の先発左腕・辛島航のスライダーに、すでに空振りの三振を2つも食らっていたのに、あえてその“鬼門”を狙って、真ん中に入ったスライダーを真っ芯で捉えた。
一、二塁間に飛んだ低いライナーに、守っていた2人が1歩も動けなかった。猛烈な打球だった。
思わず「うまい!」と膝を叩いてしまった。
やられたボールを狙っていく。それはプロの“常套手段”であって、ルーキーがあっさり出来ることじゃない。
打てそうな真っすぐしか考えないか、普通は「なんとかヒットを……」と、来るボールを全部追いかけ回し、なかばパニック状態で打ち取られてしまうのが普通の18歳ルーキーのデビューというものであろう。
それが、きちんと四つに組み合って“勝負”に持ち込んでいったのだから、それだけでも見上げたものだ。
左ヒジを上げた新たな打撃フォーム。
プロ初安打を鮮やかな「ワザあり」できめた清宮選手の、打席での構えが変わったと、新聞が報じていた。
ポイントは「左ヒジ」だ。
100本以上の本塁打を量産した早稲田実業当時も、確かこの春のキャンプの頃も、打席で構えた時の左ヒジは地面を向いていて、したがって左脇は締まっていた。しかし、今はその左ヒジが肩の高さほどまでも上がっていて、左脇が大きく空いている。
この構え方は「大谷翔平スタイル」とも評されて、同じようにステップアップした大谷翔平選手が、MLBの野球に適応するために自分を改良すべく取り組んだテーマの1つだった。