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<イチローへのメッセージ>稲葉篤紀「侍ジャパンの一員なんです」 

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鈴木忠平(Number編集部)

鈴木忠平(Number編集部)Tadahira Suzuki

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photograph byYukihito Taguchi

posted2018/05/07 06:00

<イチローへのメッセージ>稲葉篤紀「侍ジャパンの一員なんです」<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi
昨年の7月に就任した侍ジャパンの稲葉監督はかつてイチローとWBC制覇を成し遂げた絆を持つ。 東京五輪を戦う将が代表におけるイチローを語る。

 ここのところ、稲葉家のテレビはほぼ二択だという。アンパンマンか野球。もっとも丸顔のヒーローが飛びまわっている時、稲葉はスマートフォンの画面で再び白球を追っているから、ほぼ一択なのだが……。

「たまには頭から野球が離れないの?」

 家人の声には苦笑いするしかない。

「(昨年)11月と(今年)3月に呼んだメンバーは気になるので。それに自分は監督経験がないので、このカウントでどういう作戦をするか、いつ投手を代えるかとか、先を読む訓練をしておかないといけない。見始めると、キリがないんですけど」

 稲葉は選手、コーチとして4度の国際大会を経験しているが、うち3度は敗退の記憶である。とりわけ焼き付いて離れないのは選手として出場した'08年北京オリンピック準決勝で韓国に敗れたシーンだ。

「最後の外野フライを捕った韓国の選手が崩れ落ちて、拝んでいた。あれが象徴していると思うんです。五輪ってすごい重圧があるんです。間違いなくWBCよりも負けられない雰囲気が出るんです。その中で気持ちを強く持って、熱く戦える選手かどうか。そういう意味で、今は選手が調子の悪い時にどうするかを見たりしています」

 競技の枠を超えた国と国の戦い。あの舞台で自分が決断できるか。選手たちが力を出せるか。まだ、2年もあるというのにすでにイメージは鮮明だ。だから、頭の中を野球が支配する。これが東京オリンピックを任された代表監督の日常である。

 そんな中、稲葉には1度だけ勝って終わった記憶がある。2009年の第2回WBCだ。それはイチローという突出した存在を中心に、チームが1つになり、挫折や重圧をはねのけた末の優勝の記憶である。

「あのWBCはメジャーでやっている選手が5人もいたんですが、中でもイチロー選手は別格でした。そんな選手が全員に、野手だけでなく投手にも声をかけて、溝を生まなかった。他の選手が『イチローさんってこういう人だったんだ』という雰囲気になり、1つになっていったんです」

この記事は雑誌『Number』の掲載記事です。
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