炎の一筆入魂BACK NUMBER
黒田博樹の引退から2年――。
広島に次のエースは出てくるか。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/04/29 08:00
黒田氏は2016年限りで引退。現役最後の登板は日本ハムとの日本シリーズ第3戦で、最後の対戦相手は打者・大谷翔平だった。
立ち居振る舞いはそれでいいのか。
ただ、黒田氏が引退して2年――。
今の広島投手陣に黒田の背中は見えているか。広島投手陣は、チームの順位、現状に満足することなく、もっと貪欲に、もっとこだわりを持ってマウンドに上がらなければいけない。
たとえ四球を出しても、その中でできることはある。マウンドだけでなく、マウンドを降りてもできることはある。登板に向けた取り組みも変えられる。技術は一朝一夕で変わるものではないが、姿勢は気持ち次第で変えられるはずだ。
最もエースに近いと思われていた野村だが、今季は精彩を欠く。背中の張りがあったとはいえ、4月13日巨人戦から登板3試合続けて不甲斐ない投球が続いた。
巨人戦は相手のエース菅野智之との投げ合いで1回に5点を失うと、26日DeNA戦も1回にもらった3点の援護点を2回までにすべて吐き出した。
万全な状態ではなかっただけに、投球内容を責めることはできない。ただエースの座を狙う者として、投球だけではなく、マウンドでの立ち居振る舞いは意識できたのではないか。
6回4失点だった20日中日戦、野村はいるべき場所にいなかった。7回のマウンドではない。7回途中でマウンドを降りる中田廉のもとに、だ。
大黒柱ならば、姿勢だけでも。
前日19日ヤクルト戦で、広島は中継ぎ投手を総動員し、延長12回を戦っていた。試合終了から12時間もたたないうちに、約500kmの移動。そして迎えた試合だった。広島は3連投の中崎翔太、ジャクソンのノースローを決めていたほど中継ぎ陣は登板過多。先発の柱として長い回を投げることが求められた。
万全の状態ではなかったからか、援護点をもらいながら初回から失点を重ね、6回でマウンドを降りた。
逆転した7回、2番手の中田が打ち込まれた。どれだけ打たれてもベンチは投手交代を告げず、マウンドへ行って間を取ることもしない。登板過多の影響を1人で背負わされているようだった。
イニングの途中で肩を落とし、ベンチに下がる中田の下に歩み寄る19番の姿がなかったことが悲しかった。大黒柱であれば、姿勢だけは見せてもらいたかった。