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菊池涼介以上の守備範囲だからこそ。
巨人・吉川尚輝が鍛える「球ぎわ」。

posted2018/04/27 15:00

 
菊池涼介以上の守備範囲だからこそ。巨人・吉川尚輝が鍛える「球ぎわ」。<Number Web> photograph by Kyodo News

吉川尚輝(中央)の守備範囲は菊池涼介級との評判も立っている。一番大事なのはアウトを奪えるかどうかだ。

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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 野球ファンのみならず、サッカーなどの球技に興味のある方は「球ぎわ」という言葉を、どこかで一度は聞いたことがあると思う。

 実はこの「球ぎわ」という言葉は、巨人軍V9を指揮した当時の川上哲治監督が作った造語なのである。その意味を川上監督は自著『禅と日本野球』の中でこう記している。

「球ぎわというのは、実は昭和34年(1959年)ごろ、私が創作した新語だが『球ぎりぎりのところ』と理解していただこう」

 そうして川上は「球ぎわの強さ」についてこんな風に解説している。

 打者の打った打球に野手が反応して体を動かすが、捕れそうにない。しかしそこから体を投げ出して、さらに空中で身体を伸ばし、グローブを突き出して捕球する。身を投げ出した野手の頭には、捕れるという判断もファインプレーを演じようという意識もない。無意識に打球に飛びつく執念ということだ。

井端コーチの話が「球ぎわ」に通じる。

 ただ、それは単なる精神論ではない。投手の投げる球種を計算し、相手打者の打球方向を予測し、そういう周到な準備の上でバットがボールに当たる直前に1歩目を踏み出す。

「私はこの“プロの美技”を求めている。そのために、最後は無心に身体を投げ出せというのである」

 こうして「球ぎわ」に強くなるためには、練習から常に最後にあと一歩を踏み込む意識で取り組む以外にない。そういう練習をさせるのがコーチの役目だ、とも書いている。

 前回のこのコラムで巨人・井端弘和内野守備走塁コーチの話から、岡本和真内野手の守備と打撃の相関性の話を書いた。実はそのとき井端コーチを取材したのは、岡本の話を聞くためではなく、もう一人、気になる選手の守備について評価を聞くことが目的だった。

【次ページ】 「守備範囲だけなら菊池より広いかも」

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