炎の一筆入魂BACK NUMBER
黒田博樹の引退から2年――。
広島に次のエースは出てくるか。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byHideki Sugiyama
posted2018/04/29 08:00
黒田氏は2016年限りで引退。現役最後の登板は日本ハムとの日本シリーズ第3戦で、最後の対戦相手は打者・大谷翔平だった。
黒田は不満も苦笑いも見せなかった。
野手だけでなく、中継ぎ陣もまた先発陣を支えている。中継ぎの防御率は2.89。中5日や中6日の登板間隔が空く先発と違い、中継ぎは毎日準備し、投げる覚悟でいる。中継ぎを助けるのもまた、先発投手だろう。
黒田氏は現役時代、球数が100球を越えたイニングに「代わるか?」と投手コーチが尋ねると「(今村)猛は連投が続いているから、もう1イニング投げます」と直訴したこともあった。
もちろん失点を重ね、マウンドで不満の表情を出すこともなければ、苦笑いを見せることもなかった。マウンドでの立ち居振る舞いはチームに影響することを知っていた。
野手陣が抱く投手陣への信頼をつなぐ役割を担うのもエースだろう。
広島が低迷していたときも、打高投低だった。当時は自然と野手陣の発言力が強くなり、それは試合でも見られたという。四球を出す投手、失点を重ねる投手への声は励ましを超える鋭さがあり、若い投手は萎縮し、力みにつながった。
今の広島の強さは一体感であり、団結力にある。投手陣と野手陣は信頼関係で成り立っている。低迷期を知る元エースの黒田氏と新井が広島に帰ってきたことがチームのターニングポイントとなり、広島は変わっていった。
背番号15の残像がみえなくなってしまったのならば、新しいものをつくればいい。そんな気概のある投手の台頭が待たれる。