野ボール横丁BACK NUMBER
大谷翔平の本質を示すエピソード。
「イラッときたら負けだと思ってる」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byAFLO
posted2018/04/20 08:00
凡退しても、打たれても、大谷翔平が感情をあらわにする場面はほとんど記憶にない。
高校時代、外野4人シフトをしかれて……。
先日のロイヤルズ戦、大谷本人はねらったわけではないとコメントしていたが、結果的に、全体的に右よりだった「大谷シフト」の逆を突き、インコースのボールをレフト線へ落とし二塁打とした。この「流儀」は、高校時代からのものである。
花巻東高校時代の恩師、佐々木洋監督が打者・大谷を象徴する場面として、こんなシーンを挙げたことがある。
「ある試合で相手チームのサードが外野に回って、外野4人シフトをしかれたことがあるんです。そのとき大谷は、がら空きの三塁側にポンとゴロを打ったんです。ピッチャーのときはムキになるんですけど、バッターのときはその逆なんですよね」
そのときの当たりは、ショートへの内野安打になったそうだ。
ムキにならない大谷、という手がかり。
過去、日本でスラッガーと呼ばれるような人たちは、どんなシフトをしかれようとも、絶対に自分のスタイルを変えなかった。王貞治しかり、松井秀喜しかり、早実時代の清宮幸太郎もそうだった。
だが、大谷はいとも簡単に変化する。どこかに「遊び」があるのだ。
もし、大谷がバッターに専念していたら、また違った対応を見せていたのかもしれない。バッターのとき遊べるのは大谷の本質が投手だからなのかもしれない。
いずれにせよ、イラッとしない大谷、ムキにならない大谷というのが、私の中での大谷をつかむ1つの手がかりとなっている。