藤田俊哉の日欧蹴球比較論BACK NUMBER

リーズ強化スタッフの藤田俊哉が語る
井手口陽介、前倒し移籍の理由と今。 

text by

藤田俊哉

藤田俊哉Toshiya Fujita

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2018/04/13 08:00

リーズ強化スタッフの藤田俊哉が語る井手口陽介、前倒し移籍の理由と今。<Number Web> photograph by Getty Images

スペインの地で出場機会に恵まれない井手口。ロシアW杯23人枠に滑り込みなるか。

リーズのフロントが持つ明確なプラン。

 豊富なスタミナを武器にピッチを走り回り、鋭い出足で相手からボールを奪って攻撃に転じる。タイミング良くペナルティーエリアに走り込みチャンスを狙う。パンチの利いたシュートもある。現代の中盤で求められる「ボックス・トゥ・ボックス」で活躍できるタイプだからだ。

 テクニカルディレクターのビクターは「当時20歳だった彼のポテンシャルを高く評価した」と語り、「チャンピオンシップに順応し、確実に実力をつけて、クラブをプレミアリーグ昇格に導く活躍を期待している。その後はより大きなクラブからのオファーを受ける」という明確なプランも持っている。

 イングランドのリーグはヨーロッパの中でも特別だ。

 私がコーチしていたVVVフェンロ(オランダ)にも、イングランドへの憧れを抱く選手は多いし、VVVに限らず多くのオランダ人がイングランドでのプレーを夢見ている。

 もちろんプレミアリーグに加入できれば最高だが、チャンピオンシップ(2部リーグ)でもプレーできる喜びは大きいようだ。クラブの経営規模は決して小さなものではなく、選手の平均年俸はヨーロッパ各国リーグで8位に位置する。

 リーズのホームスタジアムには毎試合33000~35000人の熱狂的なサポーターが集まる。総予算は60~70億円で、この数字はエールディビジにおいてもトップクラスの規模だ。

フィジカルコンタクトの中でのクオリティ。

 とはいえプレー面では、プレミアとチャンピオンシップで大きな違いがある。プレミアでは巨大な資金力で世界中からトッププレーヤーが集められている。

 監督もアーセン・ベンゲル(フランス)やジョゼ・モウリーニョ(ポルトガル)、ペップ・グアルディオラ(スペイン)、ユルゲン・クロップ(ドイツ)など世界最高峰の監督が集まり、独自のサッカースタイルで頂点を目指す。

 したがって、プレミアリーグは典型的なイングランドスタイルのフットボールとは表現し難い。伝統的なスタイルである『キック・アンド・ラッシュ』はむしろチャンピオンシップに色濃く残されている。

 両リーグの大きな差は、激しいフィジカルコンタクトの中で展開されるプレーのクオリティの差にあると私は考える。激しさは同じだが、完璧にボールをコントロールされた状態では、守備側は簡単には飛び込めない。プレミアはそのクオリティが非常に高いため、時間的な余裕があるように見える。

【次ページ】 吉田、岡崎に続く成功例となれ。

BACK 1 2 3 4 NEXT
井手口陽介
藤田俊哉
リーズ
クルトゥアル・レオネサ
ロシアW杯
ワールドカップ

サッカー日本代表の前後の記事

ページトップ