藤田俊哉の日欧蹴球比較論BACK NUMBER
リーズ強化スタッフの藤田俊哉が語る
井手口陽介、前倒し移籍の理由と今。
text by
藤田俊哉Toshiya Fujita
photograph byGetty Images
posted2018/04/13 08:00
スペインの地で出場機会に恵まれない井手口。ロシアW杯23人枠に滑り込みなるか。
様々なパターンを想定したスペイン移籍。
その差をどうにか埋めたいとの思いが高まり、一刻も早くヨーロッパに渡ることを決断したのだ。熱い願いが両クラブに届き、W杯後の予定だった移籍が、急展開で1月に決まった。そして最初の半年間は、スペインのクルトゥラル・レオネサにレンタル移籍する形で合意した。これはいくつものパターンを想定して、話し合った末の決断だった。
スペイン2部リーグのレベルは、決して低くない。それどころかオランダ1部のエールディビジと遜色ない。その一方でフィジカル面ではリーズが戦うチャンピオンシップほど激しくない。ここでなら良い準備ができるのではと、リーズは井手口に提案した。
現状に不満がなくとも、新たな挑戦の舞台を求める。周りから見れば無謀な挑戦に見えたとしても、湧き上がる情熱を持って生きたいのは選手特有の心理だろう。井手口自身も、そう考えて過ごしていたはずだ。そんな熱い思いを心の片隅にしまっては、思い切りよく前へ進めないし、心に大きな穴が空いてしまいかねない。
ならば、できるだけ早く、若いうちに挑戦してもらいたい。後悔が残らないよう行動すればいい。
井手口はそんな経緯を経てスペインでのプレーを決断した。
監督が「戦術に順応しようとし過ぎ」と。
とはいえ現状では出場機会が少なく、苦しい状況に立たされている。監督のルベン・デ・ラ・バレーラは、井手口にこう伝えている。
「クラブの戦術に順応しようとし過ぎるあまり、本来の長所であるアグレッシブなボール奪取やミドルシュートが影を潜めている」
「ピッチでもっと自分の良さを表現してほしい」
トレーニングではスキルの高さや、フィジカル面での順応性も証明している。その長所を試合のピッチで見せることこそが求められている。
自分の力を世界で試す大きなチャンスは始まったばかり。焦る気持ちは抑え、タイミングを待つ。そして考えすぎずに思い切りプレーすればいい。彼にはそれだけの力がある。
我々リーズとしても、井手口のそんな特徴に早くから注目していたのだから。