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中田英寿が語った代表監督交代劇。
「僕が考える日本らしいサッカーとは」
posted2018/04/13 16:00
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
Yuki Suenaga
第2期を迎えたNumber Sports Business College、その最初の講師は中田英寿氏だ。サッカー日本代表を初めてのワールドカップ出場に導き、イタリア・セリエAで優勝も経験したが、引退後はサッカーの現場から離れている。現役時代から独自の道を行くカリスマがビジネスをどう語るか。固唾を呑む受講者に、冒頭から中田氏らしい言葉で答えた。
「今でもビジネスには一切、興味ないです。自分が面白いと思うことをやるために環境を整えないといけない。ビジネスもその一部なんです。サッカーをやっていた時も走るのが嫌いだったけど、走らなければ勝てないし、走れれば有利になる。ビジネスもそれと同じなんです」
引退後は多くの選手が指導者を目指すが、中田氏はプレーすることと、指導者になることは別だと考えた。そこに人生観が表れている。
「僕はずっと好きなことをやってきた人生なんです。自分が好きじゃないことは1つもやっていない。サッカーもやるのが好きなんであって、僕が考えるサッカーというのは教えることでも、話すことでもないんです」
サッカー以外の選択肢を広げるため。
2009年に全国47都道府県をめぐる旅を開始し、これをきっかけに伝統文化・工芸などを支援する「REVALUE NIPPON PROJECT」をスタート。2015年には「株式会社 JAPAN CRAFT SAKE COMPANY」を設立した。
「サッカーを辞めた後に世界に出たのは、サッカー以外に何も知らなかったから、選択肢を広げるためです。海外では日本はすごいと言われるし、必ず日本人として見られるにもかかわらず、その自分たちのカラーを知らない。それって家族のことを知らないのと同じなんです。これは勉強すべきだなって。
それで日本に帰ってきて、勉強した結果、これは面白い、と。ここ数年、日本酒など日本の伝統産業が世界的な市場になった。でも日本では今まで通りで、世界に合わせたやり方にはなっていない。それをビジネスとして捉えるというより、みんながハッピーになる仕組みをつくりたいんです。楽しそうな人が多いほど、自分も幸せになれるから。悲しさは1人にしかわからないんですけど、幸せはシェアできるんです」