藤田俊哉の日欧蹴球比較論BACK NUMBER
リーズ強化スタッフの藤田俊哉が語る
井手口陽介、前倒し移籍の理由と今。
posted2018/04/13 08:00
text by
藤田俊哉Toshiya Fujita
photograph by
Getty Images
W杯ロシア大会まであと2カ月というこのタイミングで、日本代表のハリルホジッチ監督が解任された。
直接のきっかけはベルギー遠征だという。確かに2試合とも芳しい内容ではなかった。それによって監督と選手の信頼関係が著しく崩れたことが最大の理由だろう。試合後の選手達の表情からはW杯に向けての不安要素ばかりが伝わってきた。
劇薬の投与は必須、という深刻な状況だったことは間違いない。
後任に決まった西野監督のもと、新しいチームはどんなメンバーで構成されるだろうか。今回の遠征に呼ばれなかった選手にもチャンスが与えられるかもしれない。
その中で取り上げたいのは、W杯アジア最終予選オーストラリア戦でのミドルシュートと攻守両面でのハードワークで、インパクトを残した井手口陽介である。
彼はその後、今年1月にガンバ大阪からリーズ・ユナイテッドへの移籍を決意した。当初はヨーロッパのシーズン終了後だった予定を前倒しにしてでもだ。
本来の移籍タイミングはW杯後だったが。
2017-'18シーズンからリーズ・ユナイテッドの強化スタッフ(Head of Football Development-Asia)となった私は、クラブのアジアに関する強化からマーケティングまで全てを担当している。
そのため井手口の移籍に携わったが、移籍先のイギリスは就労ビザ取得のハードルが高い。契約後すぐに手続きを開始しても、許可が下りるか定かではなかった。必要条件となる国際Aマッチの出場試合数で、解釈の違いが生まれるからだ。
そんな懸念材料もあって、彼がリーズに合流するタイミングについては、クラブ同士で協議を重ねていた。そこでW杯終了後、ヨーロッパの新シーズンに合わせるのがベストだろうと考えられていた。
状況が大きく変わったのは昨年11月のブラジル戦とベルギー戦を経て、移籍のタイミングが半年早まることになった。
この2試合で世界トップレベルを肌で感じ、その差に衝撃を受けたという。「自分は何も出来なかった……」とのコメントにあるように、不甲斐なさを感じたのだろう。