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西野監督へ「リベロ長谷部」の提言。
実は名古屋時代は堅守速攻だった。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byGetty Images
posted2018/04/13 17:30
戦術眼と対応力が問われるリベロで、長谷部誠は新境地を開拓した。日本代表でもその力は生かせると思うのだが……。
リベロ長谷部のバランス感覚は出色。
所属するドイツのフランクフルトでは、もはやお馴染みのポジション。昨季2016-17シーズン途中から、クロアチア人のニコ・コバチ監督は長谷部を本職のボランチと3バックの中央の両位置で起用している。
現地の試合も取材したが、3バックに入った長谷部は非常にバランス感覚に長けたプレーをする。
周囲では体が頑強な選手たちが敵と球際で戦う。もちろん長谷部も局面では激しい争いに身を投じるが、周りで繰り広げられる数々のデュエルの先の展開を予測し、ボールを奪い、拾う。そしてマイボールにして味方に配給するというリズムが良い。
先を読むポジショニングは彼のクレバーさが生かせるところ。パワーが前面に押し出されるブンデスリーガの舞台で、長谷部が出色の存在として輝ける理由である。
“クラブでのプレー”という方針とも一致。
一方、これまで日本代表では本職のボランチで長らくプレーしてきたが、率直に言ってここ最近のパフォーマンスは安定感を欠いている。出場試合を振り返っても、昨年11月のブラジル戦や3月のマリ戦、ウクライナ戦ではイージーなパスミスが散見され、守備面でも後手に回る場面も。
特に球際での競り合いでは、ハリルホジッチ監督が求める1対1の強さや耐久力という面で相手選手に上回られていた。DFの前で敵を止めるフィルター役としては、正直不十分な働きだった。
長谷部は、西野体制でも主将を任されるだろう。未だにピッチ内外で代えの利かない存在だとも見られている。今の彼にピッチでよりスムーズに力を発揮させるためには、リベロ起用は現実的な策になる。
それは西野監督が語る「クラブで見せているような自分のプレーをもっと素直に代表で表現してほしい」という言葉とも、合致する起用法だ。
長谷部を中央に、両脇に日本人選手の中ではデュエルを武器にできる吉田麻也と槙野智章が並ぶ3バック。左右の両ウイングバックには、サイドを上下動する排気量を持つ長友佑都と酒井宏樹が入る。
攻撃に出る際には長谷部が中盤のアンカーの位置まで上がり、陣形を押し出しながらビルドアップに参加。反対に相手に押し込まれる場面では、両サイドも下げた5バック気味で守る割り切りも必要かもしれない。