サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
時機を逸した監督交代の唯一の価値、
日本人指揮官で戦うということ。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byJFA/AFLO
posted2018/04/10 13:30
西野監督の組閣では早川直樹コーチ(左)、手倉森誠コーチ(中)ら日本人スタッフの去就も注目される。
外国人監督が考えるのは「いま」だけ。
しかし中長期的な視点に立つと、今回の監督交代の違う側面が見えてくる。
日本人監督のもとでW杯を戦うことは、日本サッカー界にとってプラスに働く。
外国人監督とそのスタッフが考えるのは、日本代表の「いま」だけである。フィリップ・トルシエもジーコも、アルベルト・ザッケローニも、基本的には「W杯でいかに勝つのか」に集中した。
チーム作りは自分の価値観に照らし合わせたもので、彼らが敗戦の理由としてあげたのは拍子抜けするほど一般的なものだった。いわく、「経験不足」や「個の力の差」である。
おそらくそこには、「日本人ではなく自国の選手ならできるのだが」とか、「日本はまだサッカーの歴史が浅いから」といった諦めに似た思いがあったはずだ。
世界のトップ・オブ・トップに比べれば日本人は国際経験がなく、個の力でも劣るのは我々も理解している。それでも勝つためにはどうしたらいいのかは、誰ひとり明らかにしてくれなかったと言っていい。
そもそもGL突破は苦しい立場。
西野監督がどのようなサッカーをするのか、いまはまだ分からない。それでも、「日本人らしさ」を置き去りにすることはないはずだ。ハリルホジッチ監督のように世界のスタンダードを押し付けるのではなく、日本人の強みと弱みを整理したうえで勝利への道筋をつけていくだろう。
つまりそれは、ロシアW杯という「いま」を戦いつつも、2年後の東京五輪や4年後のカタールW杯にもつながる「これから」を見据えた戦いをする、ということだ。
W杯の直前に監督を代えた国が、グループリーグを突破した例はきわめて少ないとの指摘がある。そのとおりである。
ただ、コロンビア、セネガル、ポーランドとの争いで、日本は最後列に位置している。そもそもグループリーグ突破が苦しい立場であり、それならば、選手との信頼関係が薄れているハリルホジッチ監督よりも、日本人の西野監督のもとで戦うことに価値を見出せる可能性はある。結果がどのようなものになるとしても、日本サッカー界の財産として未来へ生かすことができる。