サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
時機を逸した監督交代の唯一の価値、
日本人指揮官で戦うということ。
posted2018/04/10 13:30
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
JFA/AFLO
日本代表が揺れている。4月9日、日本サッカー協会はヴァイッド・ハリルホジッチ監督の解任を発表した。彼が連れてきた3人の外国人スタッフもチームを離れる。
ロシアW杯の初戦まで、すでに2カ月しかない。W杯優勝を射程とするドイツ、ブラジル、スペインといった強国はもちろん、日本がグループリーグで対戦するコロンビアらの3カ国も、すでにしっかりとチームを固めている。
世界の強国を追いかける立場にありながら、W杯への準備を振り出しに戻すかのような監督交代は、率直に言って恥ずべきことである。日本サッカー協会の失態だ。
ハリルホジッチ監督を代えたのが悪いのではない。明らかに時機を逸していることに問題がある。
解任に至る経緯を説明した記者会見で、日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「選手とのコミュニケーションと信頼関係が薄れている」ことを理由にあげた。しかし、ハリルホジッチ監督と選手との間には、サッカーの方向性についてそもそも乖離があった。
指揮官が求めるタテに速いサッカーは、日本人選手の特徴との親和性に欠ける。それでも選手たちが表立って不満の声をあげてこなかったのは、ロシアW杯の出場権をつかむという明確な目標があったからだった。
組織の構図として歪んでいる。
「ロシアへ行くこと」から「ロシアで勝つこと」へ目標が変わると、厳しい現実が明らかになっていく。格下ハイチとホームで引き分けた昨年10月や、韓国に1-4で惨敗した同12月も、監督交代のタイミングには成り得るものだった。
田嶋会長は「その時々で色々な話をしてきた」とするが、ここまで決断を引き延ばした理由は示されていない。記者会見で繰り返し強調した「W杯で勝つ確率を1パーセントでも2パーセントでもあげるため(の交代)」とのフレーズも、虚しく響くばかりである。
新監督は西野朗氏になった。日本サッカー協会の技術委員長として、ハリルホジッチ監督の仕事ぶりを評価する立場にあった人物だ。代表監督を評価する技術委員長が後任に収まるのは、組織の構図として歪んでいると言わざるを得ない。