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フィギュアの国際ルール改正へ。
“美しい”羽生結弦が断然有利に!?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2018/04/08 11:30
『SEIMEI』で見せた、羽生結弦の妖艶でキレのある演技。単なるジャンプ以上のものを、羽生はファンに見せてくれた。
望まれるのはオールラウンドで優れた選手。
仮にこれらをもとに現在と変更案の計算を比較すれば、以下のようになる。
○トリプルルッツ *( )内はGOE
<基礎点6.00→5.90>
【現在】 8.10(+3の場合) 3.90(-3の場合)
【変更案】 8.85(+3の場合) 2.95(-3の場合)
○4回転トウループ
<基礎点10.30→9.50>
【現在】 13.30(+3の場合) 7.30(-3の場合)
【変更案】 14.25(+3の場合) 4.75(-3の場合)
2つのジャンプを例にしたが、一部のジャンプを除けば、基礎点が下がっても出来栄えがよければ従来より高得点となり、悪ければ、もっと下がることになる。
こうしたさまざまな変更(案)の根底にあるのは、「オールラウンドに優れたスケーター」の待望である。
テクニックだけでなく、美しさにより比重が。
これは主に男子にかかわってくることだが、ジャンプの基礎点の変更案では4回転ジャンプ、特にルッツで2.10、ループで1.50と下げ幅が大きくなっている。
GOEを抜きにして考えれば、高難度の4回転ジャンプを跳ぶ選手とそうではない選手、4回転ジャンプの本数が多い選手と少ない選手の差は縮まる傾向となる。
ジャンプを1つ減らすことで、技術点と演技構成点のバランスも、多少ではあるが演技構成点の側に寄せる効果がある。
また、男女共通してGOEの段階が広がることから、より完成度が高く、美しく跳べる選手はこれまで以上の得点をもらえる。高難度のジャンプを数多くこなしたからといって大きくリードできるわけではなくなる。
演技に偏りのない選手がより好成績を残せるように、という意図がそこにはある。
一方で、フリーの演技時間が4分になることを危惧する声は、少なくない。
これまでは演技の半ばなどでひと息入れるタイミングがあったが、それが難しくなるからだ。