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大阪桐蔭との戦いはボディーに効く。
「終盤に絶対点が入る」暗示の根拠。

posted2018/04/04 18:00

 
大阪桐蔭との戦いはボディーに効く。「終盤に絶対点が入る」暗示の根拠。<Number Web> photograph by Kyodo News

花巻東を19-0で下す圧倒的な破壊力と、三重や智辯和歌山との接戦を制する力。今大会の大阪桐蔭に隙はなかった。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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 大阪桐蔭が終盤に強い理由を、西谷浩一監督はこう話す。

「今年のうちは、ロング(ヒット)が打てるチームではないので。格闘技にたとえるなら、派手なアッパーとかではなく、ボディーとロー(キック)を打ち続けるしかない。そうすれば後半、相手がバテてきて点を取りやすくなる」

 7、8、9回には絶対点が入る――。西谷は今大会、この言葉を呪文のように唱え続けてきた。

 昨秋の神宮大会の準決勝、創成館戦では先制したものの、ミスで逆転を許したあとは反撃らしい反撃もできずに4-7で敗退。そこから、チームの伝統でもある「終盤に強いチームになろう」というスローガンを例年以上に強調するようになった。

 キャプテンの中川卓也も「7、8、9回は絶対に点が入るって、西谷先生に暗示をかけられるくらい言われているので」と話す。

 今大会、三重との準決勝では9回裏に2-2の同点に追いつき、延長12回に3-2でサヨナラ勝ち。智辯和歌山との決勝では7回に1点、8回に2点と着実に加点し、5-2で振り切った。

 中川は三重戦のあと、こう振り返った。

「前半にしっかりボディを打てていた。しっかり振れていたし、チャンスもつくれていた。ストレスを与えられているから、後半勝負に持っていけたんだと思います」

大阪桐蔭の打者の条件。

 大阪桐蔭は延長に入ってからも、三重のボディを打ち続けていた。10回裏、2アウト走者なしの場面で、打席に4番・藤原恭大が立つ。1ボールからの2球目だった。

 中川が、野球界で「マンぶり」と言われるほどの豪快なスイングで空振りをすると、西谷監督はベンチからOKのサインを送った。

「藤原がなんか元気なくて、スイングがちっさくなっていたんで。あんな大振りして……と思われるかもしれないですけど、ピッチャーに嫌なバッターはどんなバッターか聞くと、たいてい2つのことを言うんです。1つはボールを振らないバッター。もう1つは、振ってくるバッターなんです。

 ですから、うちの打者はファーストストライクからフルスイングできることが絶対条件。プロにいったうちのOBたちは、今でもそうですよね。浅村(栄斗=西武)も森(友哉=左同)も、とにかく振っていく。強いスイングを見せることで、精神的にダメージを与えることができるんです」

【次ページ】 相手に圧をかけることは何でもやる。

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